日本の「水輸出ビジネス」が苦戦するワケ インドで展開する水プロジェクト<第3回>

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ムガール帝国の末裔たち

午前8時を過ぎると、アグラのトランスヤムナ地区ではほぼ水の供給は止まってしまう。

その日、遅れて共同の取水場に駆けつけた兄弟が、枯れた水道口を前に大きなバケツを持ってたたずんでいた。見かねた近所の人が、自分たちが汲んだなけなしの水を分けている。

アグラに暮らす約2割の貧困層は、“危険な水道水”とわかっていても、それを飲み水に使っているという報告がある。毎日使う水にカネをかける余裕など、この地の多くの住民は持ち合わせてはいない。

彼らには、まだ「ガンガージャル」は来ない。アグラの給水弱者たちはいまも、劣悪な水環境の中で健康危機にさらされながら生きている。

かつてムガール帝国の都が置かれたアグラだが、ここから西に約40キロメートルの場所に、ほんの14年間だけ遷都された町がある。ムガール帝国第3代の君主で、「大帝」の名を冠されたアクバルが建設した都ファテープルシークリー。それは世界各地の先進文化と当時の先端技術を集め、新しく計画的に作られた都市だった。

しかし、ファテープルシークリーはわずかな期間しか使用されず、再び首都と王宮はアグラへと移されてしまう。理由はうち続く猛暑、そして、慢性的な水不足だったと言われている。

今、ファテープルシークリーの遺跡を訪ねると、さまざまに工夫された灌漑設備、水の確保に腐心した先人の知恵の数々を見ることができる。だが、それでも結果的には水の問題を克服できなかった都は、捨てられ廃墟となった。

長きにわたってこの地では、水が人々の暮らしを左右し続けてきた。はたして現代人は、突きつけられる水との宿命に、新たな解決を見い出すことができるのだろうか。

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