「能・狂言」の趣を知らない人に教えたい超基本

教養として学びたいならまず能楽堂に行こう

決してたやすくわかるものではないですが、だからこそ面白さがあります(写真:VOLVON/PIXTA)
能や狂言=能楽という古典芸能について、「難しそう」「敷居が高い」といったイメージを持っている人は少なくないかもしれない。
一方、「実際は海外旅行に行くよりも、ゴルフや登山の道具を買い整えるよりも、簡単に一歩を踏み出せる」と説くのは『教養として学んでおきたい能・狂言』の著者、葛西聖司氏。能楽堂の楽しみ方を説いた同書第1章の一部を抜粋して掲載する。

能・狂言は能楽堂で初体験したい

みなさんが能・狂言=能楽を初めて鑑賞するには、能や狂言を上演している市民会館のホールや一般の劇場、あるいは神社や城下町で企画される「薪能(たきぎのう)」に出かけるなど、行こうと思えば意外なほど、いま住んでいる町でのチャンスは多い。

薪能は夕刻、火入れ式などの儀式を見せ、すっかり日が落ちると、宵闇に篝火(かがりび)の明かりや音が一緒に楽しめ、行楽気分に浸れるし、写真好き、ブログが趣味の人には絶好の機会だと思われそうだが、私はおすすめしない。なぜかといえば篝火は、ほんのお飾り。実際は照明装置で照らし、スピーカーで拡声しと……能楽を「教養」として初めて味わうには、少し違うかな? と思える能楽イベントなのだ。

実は、苦い体験がある。私が能を愛するので、小学生だった息子たちを薪能に誘った。その結果、「2度と見たくない」と言われてしまったのだ。夏場の日暮れ時に火入れをし、狂言が始まる頃、暮れなずみ、周りで鳴いていた蝉の声がおさまり、いつしか虫の声に変わる……そんな素敵な体験を、子どもたちに味わわせたかったが、あいにくこの年の夏は猛暑だった。

芝生に日中の炎暑がこもり、汗が噴き出る、その上、西日が照り付け……あとはご想像におまかせする。(冷房が効いた)能楽堂に連れてゆけば、まだ、いい思い出ができたかもしれない……とこれは個人的な理由である。

もちろん、薪能という形式は伝統的なものなので、ぜひ見ていただきたいし、その土地ならではの味わいがある。たとえば『羽衣』。静岡市清水での海辺、有名な羽衣の松の前での薪能は富士山が遠望でき、内容そのままの素敵なシチュエーションで、見るなといっておいて褒めるのも変だが、ご覧になるならおすすめのひとつではある。でもできれば、能楽堂で能を何回か見て、少したってから体験してほしい。

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