コロナ終息後に「東京一極集中」は変わるのか それでも人々が「東京」を選んで住む理由

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次に0~14歳階級の全国からの転入超過数が多い自治体を見てみよう。

①さいたま市:1482人 ②札幌市:906人 ③柏市(千葉県):838人 ④印西市(千葉県):747人 ⑤流山市(千葉県):745人 ⑥八王子市(東京都):678人 ⑦町田市(東京都)623人 ⑧江別市(北海道):591人 ⑨藤沢市(神奈川県):558人 ⑩つくば市(茨城県):549人

東京に住む子育て世代の転出先の上位である埼玉、千葉両県の自治体が上位(1,3,4,5位)を占めている。子どもができた若い夫婦が、住宅コストが低めで交通の便のいい首都郊外に移っているケースが多いのだろう。

さまざまなデータを見てきたが、定住志向が高かった都民の意識調査とは裏腹に、現実は30代ファミリー層とシニア・高齢者層は東京を離れていく人々が多いことがわかった。

東京は今後どうなるのか

今の東京の現状に戻ろう。残念ながらコロナ感染拡大の収束は一向に見えてこない。超過密都市という“檻”の中に閉じ込められた都民の意識が、この逆境の中でどう変化しつつあるのか。それだけではない。これまで東京の大学や企業、官公庁を目指してきた地方の若者たちの上京志向がどう変わるのか。前代未聞の感染者数を出しつつある超過密都市・東京のリスクがあらわになったことで、東京のブランド価値は変容する可能性もある。

一方で、休業、生産停止や長期的なテレワークが行われたことで、企業の経営スタイル、労務管理にも今後大きな変化がみられるはずだ。本社移転、機能分散、在宅勤務の日常化といった分散型経営の動きが出てきてもおかしくない。感染症だけではなく、首都直下地震などの大災害にも備え、一極集中のリスク回避に向けた行動が官民挙げて本格化していくことも考えられる。

長期化するコロナ禍は人々の思考、ライフスタイル、企業のあり方から国のあり方までをも見つめ直す一大転機となる。感染拡大の収束に向けた動きが最優先されるのはもちろんだが、「ポスト・コロナ」時代を見据えたドラスチックな意識改革と行動変化が必要なのかもしれない。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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