――それが、なぜ政府とつながったのか?
「山形県と福島県に話をしたところ、欲しいと言われて、調達の運びになりました。その後、国で一括でやるということにシフトしたんです」
――国との具体的な契約内容は?
「布マスク350万枚を約4億円で受けました。すべて納入済みです」
――衛生面で不良品が出ているが、どのように管理していたのか?
「うちのマスクは1枚も不良品は出ておりません。それからほかのところは納入に遅れが起きたり納期を守らなかったりしていますが、うちは納期を全部守って、1枚も不良は出ていません。
うちのマスクは、コロナの問題が起きる前に、通常1枚300円から500円。高いものだと1000円を超えて取引されている品質のものです。安く調達して、洗って使うということと衛生上のことを考えて、人体に影響のないナノシルバーを練りこんだ糸を使った、抗菌マスクです。したがって非常に衛生的で今のところ事故報告もないと」
樋山社長の饒舌な語り口は、取材されることを楽しんでいるようにも感じる。だが、饒舌な人ほど、自分が話したいことだけを口にして、肝心なことは隠す傾向が強い。
なぜ、ユースビオの名前が公表されなかったか、尋ねると─―。
「うちのマスクはまったく事故が起きていないということじゃないですか。汚れ、ごみ、カビ、虫、そういう問題が起きたときに、厚労省から名前の公表はOKですかという話がきました。最初にOKしたのはうちの会社です。なぜこれまで出なかったのか、私は知りません」
木質ペレットの輸出入が主業務
――会社の業務として、マスクの販売、輸入代理もやっている?
「だから、最初に違うって言いましたよね! 木質ペレットの輸出入をやっていたんですって、最初に申し上げたですよね! それが主業務であって、マスクに関してはやっていたんですか、やってませんって私答えましたよね? なぜ間違った質問をされるんでしょうか?」
電話の向こうで、樋山社長は明らかにいらだっていた。
マスクの専門業社ではない会社が、なぜ納入業者として選ばれたのか聞くと─―。
「緊急だからでしょ、それでは」
吐き捨てるように言い放って、彼は電話を切った。
強烈な違和感が残り、4月27日午後、私はユースビオのある福島市に向かうことにした。
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