コロナ禍中でも離婚調停をサクサク進める方法 「3密」の裁判所はもう紛争解決の場ではない?

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ではどのように行うのでしょうか。料金はADR調停の開催ができる事業所(法務省認可)ごとに異なりますが、前出の「家族のためのADRセンター」では、申込金が1万円、その後調停のたびに、夫婦それぞれから1万円ずつ支払えばよいそうです。平均的な調停回数は3回ほど。合計すると夫婦で10万円程度(公正証書込み)。時間も含め「コスパ抜群」の調停なのです。また、Zoomなどによる調停も可能なので、「外出自粛」中でも行うことができるのです。

裁判や調停を経験した方々は「こんなに時間がかかるとは思わなかった」と口をそろえます。調停や裁判を行う「期日」と「期日」の間が約1カ月もあるからです。お正月やお盆などが絡むと、期日の予定はさらにズレます。今回の新型コロナショックの影響で、緊急性のある案件は除いて、民事裁判は大半の期日が取り消されたそうです。離婚をめぐる夫婦の話し合いの場も、再開までは、さらに時間がかかるでしょう。

「コロナ離婚」などと書き立てるメディアもありますが、その当事者にしてみれば、心苦しい、ストレスフルな生活を余儀なくされているのです。中には、離婚をめぐるストレスから疾患を抱えている人も多く、そんな人が新型コロナに感染してしまったら……。ともかく、悩ましい夫婦問題は、1日も早く解決したいところです。

近すぎる「ファミリーディスタンス」は不幸を招く

この自粛生活の中、「笑顔」の大切さ、「息抜き」の大切さが問われています。そうはいっても、「ファミリーディスタンス」が近すぎて、空気が張りつめているという家庭もあるでしょう。先行きの経済的な不安から、妻が夫の収入に不満をもらしたことが引き金となり、夫婦間で殺人事件まで起こっています。そんな事態に陥らならないための「ガス抜き」や「緩和策」として、ADR調停も1つの道ではないかと思います。

犠牲になった方々がいらっしゃるので、こんなことを申し上げるのは不謹慎かもしれません。しかし、筆者が現場から得ている感想としては、このコロナショックは、ある意味では偏った世界を平等にする現象ともいえるのではないかと思います。話し合いの中庸なポジショニングにあるADRは「新しい常識」になるのではないでしょうか。

寺門 美和子 FP、夫婦問題コンサルタント

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てらかど みわこ / Miwako Terakado

大手流通業界系のファッションビジネス経験後、夫の仕事(整体)を手伝い主にマネジメントを担当するが、離婚。「人生のやり直し」を決意、自らの経験を生かした夫婦問題カウンセラー資格取得を目指す中でFPの仕事と出合い、ダブルで資格を取得。顧客には「からだと心とおカネの幸せは三つ巴」とつねに語る。独立系のFP集団「FP相談ねっと」認定FP。相続診断士・終活カウンセラーとしても活動を始め、人生後半の「お金と暮らしと夫婦問題」のコンサルタントとして活躍中。

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