ネットフリックスが「アニメ」を重視する理由 会員大幅増、日本でも人気タイトルが続々

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動画配信ではここ数年、アマゾンプライムなど新規参入が相次いだ。そうした中で業界では、配信権の高騰が続いている。「誰もが知るようなメジャータイトルなら、1話5000万~7000万円を支払うケースもある」(広告代理店幹部)。さらに昨年秋にはアメリカのウォルト・ディズニーが動画配信に本格参入し、「海外を中心に配信権の高騰は続くだろう」(同)。

そしてネットフリックスがいま力を入れているのが、アニメの独自制作だ。国内で第1弾となるのが、2020年中に公開予定の「エデン」。同作品では脚本から監督の選定、作画の手法までネットフリックスが関与した。

2020年2月には人気クリエイターとの提携を発表。「カードキャプターさくら」のCLAMPや「金田一少年の事件簿」を手がけた樹林伸氏など、有名クリエイター6名とパートナーシップを結び、オリジナル作品を制作する。

ネットフリックスでアニメ作品を統括するチーフプロデューサーの櫻井大樹氏は、「アニメ分野で制作にまで関与する”スタジオ化”は、日本だけでなく、全世界で進んでいる」と話す。「いままでの日本のアニメは関係者が多く、制作までの時間が長すぎるきらいがあった。放送後のコミック化やゲーム化なども、1社出資なら自由にできる」(同氏)。

提携するクリエイターの樹林伸氏は、発表会で、「これまではスポンサーありきだったり、テレビの放送コードなど制限があった。しかし、ネットフリックスはそれと比べて自由だ。業界を変えていってほしい」と期待を語った。

ヒットしたら制作会社の「負け」

しかし、日本のアニメ業界では、ネットフリックスに対する警戒心も根強い。ネットフリックスにアニメ作品を提供する制作会社幹部は、「作品がヒットすればネットフリックスの勝ち。ヒットしなければ私たち(制作会社)の勝ちだ」と自嘲気味に語る。

ヒットしているのに、なぜ制作会社が「負け」なのか。理由はネットフリックスとの契約体系にある。ネットフリックスがアニメの配信権を購入するときは「買い切り」となる。つまり、制作会社には購入時に一定額が支払われるが、どれだけ作品がネットフリックスで見られても、その額は変わらない。

さらにネットフリックスは、「視聴回数といった基礎的なデータすら、一切明かさない」(広告代理店幹部)。どんな視聴者がどれぐらいの時間、何時頃に見たのか。そうした視聴データは、ネットフリックスにとって最大の武器になる。視聴データをもとに視聴者にリコメンドをしたり、次の作品作りに生かせたりするからだ。逆にいえば、だからこそネットフリックスは、たとえ提携先であってもその中身を明かさない。

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