普段、学校や塾、習い事に忙しい子どもが、家にいる。家族が起きる前に家を出て、寝た後に帰ってきていた夫が、家にいる。家事に育児に仕事にと忙しい妻も、家にいる。
家族全員がつねに家に居るという状況のなかで、新たなイライラの原因が生まれていく。その正体は「名もなき家事」である。『4カ月の育休で見えた妻の「謎の不機嫌」の正体』の中で平常時の名もなき家事について紹介しているが、この状況下で新たに生まれた名もなき家事をこなすのも、多くの場合、妻になるのが現実だ。今回、家族全員が家にいる中で増えた「名もなき家事」の見える化をしてみた。
SNSの声で多く見られるのは、1日3食を作らないとならないという家事である。食事を作る「調理」も手間なのだが、本当の苦痛は調理ではない。3食の献立を考えるという”考える家事”である。ただでさえ安心して買い物や外食ができない今、毎日同じメニューにならないように献立を考えなければならない状況は「献立地獄」とも言えよう。
「玄関ゴミ集積場」「ランチ・モンスター」
さらに、名もなき家事は次々と増えていく。
・曜日感覚がなくなってきて捨て忘れたゴミ袋が玄関にたまる「玄関ゴミ集積場」
・規則正しい生活をしようと一緒に決めた時間割を一切守らず、テレビや動画配信サイト、ゲームなどに興じている様子にイラつく「時間割クラッシャー」
・ネット会議の最中にギャン泣きの子どもが乱入してきて対処を余儀なくされる「ミュートの達人」
・そして、「今日の昼食は何にしよう……」と考えているタイミングで「俺の昼ご飯まだ?」と無邪気に質問してくる「ランチ・モンスター」
こうした名もなき家事が折り重なり、本来やるべき家事が手につかない。やりたいことも、何もできない。しかも、この無限ループの終わりは見えない。その結果、徒労感とともに、いかんともしがたい怒りに飲み込まれてしまうのだ。
ここで、1つの解決策を提示したい。
それは「ムダに妻を呼ばない」といういたってシンプルなものである。もちろん、世界的な緊急事態を前に、家事や育児を総力戦で挑むことが最も重要である。子どもと散歩に出かけて、妻を1人にする時間を確保することも有効である。しかし、百歩譲って協力しなくてもいい。その代わり、どうでもいい用事で妻を呼ばないことは心がけたほうがいい。それだけで、どれだけイラつきを抑える効果があるかについて知っておくといいだろう。
私の妻をはじめ、多くの女性がこの「呼ばれる」という行為によって、自分のペースを乱され、ストレスを感じている。この事実に気づいたのは『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』という書籍を執筆していた際の、30人以上にものぼる膨大なインタビュー時である。
「呼ばれる」という行為は、中断を意味する。そのため、いま取り組んでいる家事や、育児や、仕事を、わざわざ中断して、対応を迫られることになるのだ。そこで「ハサミどこ?」「トイレットペーパーが切れた」「今日のご飯なに?」と聞かれ続け、1日の終わりには「今日も1日、何もできないで、疲れた」という徒労感に包まれるのだ。
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