【産業天気図・放送・広告】スポット広告に明るい兆しも、10年4~9月は「曇り」止まり、本格回復には要時間
09年10月~10年3月 | 10年4月~9月 |
放送・広告業界の2009年10月~10年3月は「雨」、10年4月~9月は「曇り」と小幅回復程度にとどまりそうだ。企業の広告予算絞り込みを受け、テレビをはじめとしたマスメディアや広告代理店を取り巻く環境は依然厳しい。
テレビ局の09年4~9月期決算は、在京キー局5社のうち、3社の減収幅が前年同期比1割を超えた。フジ・メディア・ホールディングス<4676>、TBSホールディングス<9401>の2社は数%の小幅下落で収まったが、これは両社とも買収による押し上げ効果があったため。放送事業そのものは他の3社と同様、大幅な収入減に直面している。各社とも番組制作費を大幅に削減しているが、利益水準は低い。
テレビだけでなく、新聞、雑誌といったその他のマスメディアへの出稿も減少する一方。電通<4324>、博報堂DYホールディングス<2433>、アサツー ディ・ケイ<9747>の大手広告代理店3社の売上高(電通、博報堂DYは09年4~9月期、アサツーは09年1~9月期)は、テレビ局同様に1割以上の減収。営業利益に至っては、3社とも前年同期の半分以下まで落ち込んだ。
明るい材料がないわけでもない。それはテレビの番組と番組の間に放送されるスポットCM。東京地区のスポット出稿額は今年2月の前年同月比26.6%減を底に下げ幅を徐々に縮小。9月には日テレが他社に先駆けてプラスに転じるなど、回復の兆しが見え始めている。
ただ、スポットの動きだけで広告市場は回復基調にあるとは言い難い。テレビで言えば、スポットと並ぶもう一つの収益柱であるタイム(番組のスポンサーCM)の大幅な減少に歯止めがかからないからだ。タイムは半年、1年といった長期契約が基本。だが、広告主から見れば固定費となるため、敬遠されやすい。スポットが上向いた背景には、広告主がタイムから気軽に出稿できるスポットに広告の軸足を移しているという側面もある。
足元の企業業績の改善は、ほとんどが広告費も含めたコストの大幅削減によるもの。企業業績の底打ち感を受け、放送・広告業界の業績も10年度上期に多少上向くだろうが、大きな回復は見込めないだろう。本格的な広告費の増加につながるのは、産業界全般の景況感回復から3~6カ月遅れるというのが定説だからだ。
(中島 順一郎)
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