そもそも、なぜ国内向けのスイッチの在庫が払底してしまったのだろうか。背景には、2つの要因がからんでいる。
1つ目は、スイッチの組み立てを担う台湾の鴻海、ホシデンなどの製造委託先の中国工場が、新型コロナの蔓延を受けて、稼働率の低い状態が続いていることがある。2月6日の段階で任天堂は、スイッチの本体や周辺機器などの生産、出荷の遅延が避けられない見通しであることを公表していた。
だが、それから2カ月以上継続した現在でも「フル生産からは遠い状況が続いている」(任天堂)。アメリカでもスイッチの品薄状態は発生しているが、日本よりも深刻でないのは、米中貿易摩擦の深刻化もあり、2019年6月から生産能力の一部をベトナムに移管していたことが結果的に功を奏した。
「どうぶつの森」の発売延期が影響
2つ目が、任天堂のゲーム人気シリーズ「どうぶつの森」のスイッチ版最新作「あつまれ どうぶつの森」の発売延期が拍車をかけた。どうぶつの森は当初2019年中に発売される予定だったが、2019年6月に「このゲームを最高の形で届けるため」(小泉歓晃執行役員)という理由で、2020年3月への延期が発表されていた。そこに外出自粛が重なったことで、どうぶつの森は爆発的なヒットになっている。
あつまれ どうぶつの森は、無人島にプレイヤーが移住し、どうぶつ達と交流しながらその暮らしを楽しむというものだ。新型コロナの影響で、実際に人と接する機会が制限される中、ゲーム内の仮想空間では他のプレイヤーや登場キャラクターと交流できることも人気に拍車をかけている。
SNS(交流サイト)のツイッターでは、中止になった結婚式やお花見をゲーム内で開催した、という投稿も見られる。こうして、発売開始からわずか10日で、3月の家庭用ゲームの売上本数では圧倒的首位となる260万本を売り上げている(ゲーム情報メディアのファミ通調べ。店頭、通販での販売本数を計上)。
人気タイトルが投入されると、それに伴いゲーム機本体の売り上げも伸びるのが一般的だ。ファミ通の調査によると、3月のスイッチの販売台数は、年末商戦期にあたる昨年12月の7割近くまで迫る83万台。1年前の3月の3倍も多く売れているという。