任天堂、「スイッチ」爆売れでも喜べない事情 供給網混乱で、ソニー「PS5」の発売に懸念も

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任天堂は在庫不足を解消すべく、足元では複数の部品メーカーに対し、「今年4~6月期に増産に対応してもらいたい」と要請している。4月21日の一部報道によれば、任天堂は部品各社に対し、2020年度のスイッチの生産台数が、2019年度の1割増にあたる2200万台に増える見通しだと通達したという。

一方、増産で懸念されるのは、スイッチシリーズの発売開始からすでに4年目に突入していることだ。2017年3月の発売以来、毎年販売台数を伸ばしてきたスイッチだが、任天堂の過去のゲーム機の販売台数推移を見ると、4年目以降も過去最高の販売台数を更新したのは、1989年に発売されたゲームボーイくらい。2~3年目に最高となり、その後は減少していくのが一般的だ。

2020年の年末には、ソニーの「プレイステーション」やマイクロソフト「エックスボックス」などライバルの新型ゲーム機の投入も控えている。ここでスイッチを増産して、どうぶつの森のブームが一服したあとに供給過剰となるリスクはないのか。

ゲーム業界に詳しいエース経済研究所の安田秀樹氏は「6月までの増産で在庫が積み上がるリスクはほぼない。むしろ、スマートフォン向けの需要が高まるDRAMのメモリなど、一部の部品の調達が思うようにできないことで、1割の増産が限界、というのが現実だ」と見る。

任天堂も、「増産の決定は、2020年度に発売される新作タイトルの需要なども見越したもの」と自信を見せる。2020年1月末に行われた任天堂の決算説明会で古川俊太郎社長は、「スイッチはライフサイクルの中盤」と言及しており、当面は同社の主力ゲーム機となる見通しを立てている。喫緊の課題はやはり足元の供給体制を1日でも早く立て直すことにありそうだ。

ソニーPS4も一部で品薄に

ニンテンドースイッチだけでなく、ソニーの家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)4」も一部の製品が品薄になっている。東京都内の家電量販店によると、緊急事態宣言が出た4月7日前後から買い求める人が増え始めた。

4月10日に人気ゲーム「ファイナルファンタジー7 リメイク」が発売になったことで、一気に品薄状態になった。卸会社によると「任天堂スイッチが買えず、替わりにPS4を、というお客様もいる」と明かす。特に2テラバイトの大容量ハードディスクドライブを搭載し、4K映像にも対応している最上位機種に人気が集まっているという。

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