コロナと人類は「勝ち負けなしの共存関係」だ グローバル社会では共倒れしない道を探れ

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人々の集落が地上にポツンポツンと点在していた頃は、感染症はエピデミックと呼ばれ、集落内だけにとどまり、外に広がることはなかった。経済が発展し、世界中の人々が地球上をくまなく行き交う現代だから、わずか2~3カ月で急速に世界中を飛び回ってしまう。

そして我々は、いまやグローバリゼーションの真っただ中にある。我々はすでに経済的にも、政治的にも、文化的にもグローバリゼーションの一角に組み込まれている。開かれている門を封鎖すればどうなるか。それもいま我々が身をもって学んでいるとおりだ。

グローバリゼーションなき日本とは、鎖国(1639〜1854)していた江戸時代(1603〜1867)と同じで、それでは日本人は生きていけない。現代は、経済も文化も、あらゆるものが程度の差はあれ、世界のどこかの国とつながっている。
これからの30年間も、2020年初頭に発生した新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のような事件は過去を振り返れば、今後も第2、第3と起きるだろう。
サプライチェーンを遡っていくと、ほとんどの人が知らない国の生産物が、原材料であることも珍しくない。
世界はつながっている。温暖化問題のみならず、世界は一国の都合だけで考えられる時代ではないのだ。したがって、四海に囲まれた日本としては、世界のどの国とも仲よくすることが国是である。
『丹羽宇一郎 令和日本の大問題』

力対力では共倒れしかない

「多くの感染症は人類の間に広がるにつれて、潜伏期間が長期化し、弱毒化する傾向があります。病原体のウイルスや細菌にとって人間は大切な宿主。宿主の死は自らの死を意味する。病原体のほうでも人間との共生を目指す方向に進化していくのです。感染症については撲滅よりも『共生』『共存』を目指す方が望ましいと信じます」(山本太郎『朝日新聞』2020年3月11日付)

私は、山本教授(長崎大学熱帯医学研究所)の意見に賛成だ。だから、新型コロナウイルスを「世界レベルの長い歴史で見れば友だち」と言ったのである。

だが、すべてのウイルスがというわけではない。人と同じく、友だちは選んで付き合うべきだ。暴力を振るうような相手には近づかない。もし彼らがおとなしい性格なら、友だちとして共生すればよい。

新型コロナウイルスの8割とは、我々は友だちになれそうだ。彼らは気弱でおとなしいタイプである。しかし、あとの2割は気が強く油断できない。友だちになるのは難しいタイプだ。この連中からは遠ざかったほうがよさそうである。友だちを選ぶとはそういうことである。

我々は、人間に害を与える細菌やウイルスを「悪」と見て撲滅しようとする。こうした一方を悪と決めつける態度は、国際問題では必ず聞く主張だ。対立する国を一方的に悪と決めつければ、その延長線上には戦争しかない。戦争をすれば両者が傷つき共倒れだ。

ウイルスを敵として撲滅しようとすれば、より強毒化し反撃してくることがある。そうなれば人類もウイルスも、やはり共倒れとなる。力対力では共倒れしかないのだ。

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