「だからとても有り難いことだと思っているんです。でも……」と言いながら、Fさんは少し間を置いて続けた。
「いろんな価値観の先生がいるのは当然のことです。コロナに対する温度差は、指導員のなかでもさまざまですし、誰だってコロナにかかりたくはないです。でも、午前中に学校で預かってもらっている様子を見たら、マスクをつけていない子に対して『近づかないで!』という先生や、教室に入らずに廊下から、まさに見ているだけという先生もいました。学校の先生でさえ恐れる環境で私たちは働いているんですよね」
学校は交代制の出勤となり、自宅待機する教師が多いなかで、同じ敷地内にある公設の学童保育所では指導員が働き続けているのだ。
大阪市学童保育連絡協議会は3月第1週に続き、緊急事態宣言後に市内の施設に対してアンケートを行った。3月の調査では、回答のあった42施設のうち、最長の場合、勤務時間が11時間を超える施設は半数に達し、13時間以上は1割あった。
最初の調査から1ヵ月後、「指導員不足や長時間勤務」を嘆く声がより強くなっているのではないか。そう思っていたが、46施設のうち3割を超える程度だった。
それほど長時間労働が常態化し、受け入れざるを得ないからなのか。そうも感じたが、アンケートの記述回答からは、数字の裏にある不安とプレッシャーが見えてきた。
「家族から反対されて出勤できないアルバイトがいる」ほか、「感染拡大への懸念を強く抱いている指導員」がいて、その分は他の指導員にしわ寄せが来る。なかにはシフトが回らずに保護者が代替で入らざるをえない施設があることもうかがえた。しかし、出勤を断る指導員をだれも批判はできない。
電車通勤に不安があるというアルバイト指導員に、マイカー通勤してもらうことにしたものの「駐車場の確保が難しく、費用負担が大きい」という声もあった。
公園で遊ぶことが「苦情」を招くことも
「マスクや消毒液が不足している」と答えた施設は約2割だった。
どの施設も、できる限りの感染予防は行っている。しかし、「公園に行くことを禁止し、室内を定期的に消毒などもしていますが、それが正しいのかどうか」「手洗いの指導はしているが、施設内に入ってから手を洗う事になり、菌を持ち込んでないかどうか、おもちゃの消毒をどこまでやればよいのか、どこまでやれば安全で大丈夫なのか」など、不安は尽きない。
近隣の目も怖れていた。
「大変ですね」「頑張っているね」など励ましや応援の言葉を聞く施設が少なくない一方で、三密状態を減らそうと公園で遊ぶと、「公園使用の苦情」をぶつけられたり「開所していることを怒鳴られる」ケースも。
「人数が少ない公園を探して遊んでいても、『うるさい』とか、『砂が飛ぶ』などの苦情がある。今は完全室内保育をしている」と、三密状態が深刻化している施設もあった。
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