日産が担う最新「4輪制御技術」は何が違うのか 「e-4ORCE搭載車」に実際に乗って感じたこと

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試しに安定した円旋回状態のときに、アクセルペダルを全開にまで踏み込んでみた。一般的にタイヤの摩擦円を超えて旋回維持が難しくなってしまう場面だ。

e-4ORCE搭載車に試乗する筆者(筆者撮影)

その点e-4ORCE搭載車では限界点に達しそうになると、後輪が少しだけ円の外側へと流れる弱いオーバーステア状態へと制御を変更し、ドライバーに限界点が近づいていることを教えてくれる。

よって限界点を察知したドライバーとしては、そこからゆっくりアクセルペダルを緩めれば安定走行へと戻ることができる。こうしたe-4ORCEが制御スタイルは同じく前後ツインモーターの電動車である三菱「アウトランダーPHEV」の4輪駆動力制御システム「S-AWC」に近い。

素早い反応を得意とする電動モーターの強み

今回のテストはe-4ORCEの特徴がとてもわかりやく出るようなコース設定で行った。

よって、実際の交通環境とは違ったシーンでの体感だったのだが、「e-4ORCEによる4輪制御技術は、限界性能を向上させるという目的だけでなく、雨天や降雪など悪条件下で限界点が下がった状況での安心感を高める目的があります」と開発者はe-4ORCEの狙いをあらためて語ってくれた。

確かに、素早い反応を得意とする電動モーターの強みを活かした制御、すなわち「駆動⇔回生」の瞬間的な切り替えは、荷重変動を抑えた運転操作に適しているため日常走行時にも力強い味方になる。e-4ORCE搭載車の試乗を通じて、電動車両の継続進化とエンターテインメント性の強化は、この先の日産に大きな変化をもたらすであろう。

西村 直人 交通コメンテーター

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にしむら なおと / Naoto Nishimura

1972年1月東京都生まれ。WRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員。(協)日本イラストレーション協会(JILLA)監事。★Facebook「交通コメンテーター西村直人の日々

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