清水建設が決めた現場500カ所ストップの重み 新型コロナで転機を迎える「ゼネコンバブル」

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西松や東急を含め、ゼネコン各社では本社や現場での新型コロナウイルスの感染者が相次いでおり、現場の中断などについては、「感染拡大の防止と従業員や協力会社の安全確保が目的」というのが大方の説明だ。

一方、「清水建設の今回の決定は重みが違う」と準大手ゼネコンの幹部は指摘する。「西松や東急は発注者に対して閉所の協議をするが、清水建設は自社で現場の閉所を判断し、それを発注者に伝達するというのが実際の内容だ。補償も自社で行うということだろう。従業員が亡くなったので、踏み切らざるを得なかったのではないか」(準大手ゼネコン幹部)

大林組では2つの現場でコロナウイルスの感染者が発生。同社は4月15日の夜に「緊急事態宣言の対象地域では5月6日までの施工中断を前提に4月20日から発注者との協議に入る」と発表し、4月25日から5月10日までは一斉休業するとした。

協力会社でも、設備工事のダイダンや新菱冷熱工業は早々に原則閉所の方針を打ち出している。こうした動きもあり、「現場の職人からも『工事はどうするんだ?』と不安の声が広がっている」と中堅ゼネコンの担当者は打ち明ける。

大半のゼネコンは工事を継続

今のところ、こうした閉所の方針を公表している会社は少数派で、大成建設や鹿島を筆頭に大半のゼネコンは工事を続けている。いずれも新型コロナの感染拡大への対策を行うものの、発注者から中断の方針を示さない限り、工事は続行する方針だ。「1件、数十億~数百億円という請負代金をもらっている以上、われわれの都合や判断で現場を止めることはあり得ない。納期厳守は絶対だ」(中堅ゼネコン関係者)。

さまざな業界で自粛ムードが広がる中、仮囲いの中で動き続ける重機や作業員、交通誘導員の姿は目立っている。「発注者である国土交通省や不動産デベロッパーが『当面の工事を自粛する』と強く言ってくれないと、どうにもならない。清水建設の件を機に、世論が(建設業界にも)自粛を求めるようになって、発注者側が動き出さないと工事は止まらないだろう」(前出の準大手幹部)。

コロナショックに直面した企業の最新動向を東洋経済記者がリポート。上の画像をクリックすると特集一覧にジャンプします

東京都は2020年度発注予定の公共工事について、総量や金額は変えないものの、医療関係など優先順位が高いものを除き、入札などを当面自粛する方針を打ち出した。国交省も業者側が工事の一時中止意向を示した場合は対応をするとしている。ただ、「国交省自身が全面自粛とは言っていない。責任放棄だ」(準大手幹部)と批判する。

ここ数年、東日本大震災の復興需要や2020年の東京五輪、都心部での再開発需要に沸き、平成バブルを超える過去最高の好決算を謳歌したゼネコン各社。 短期的には「現場の閉所が長引けば業績への影響は避けられない」(清水建設)というは当然ながら、主要顧客のデベロッパーや製造業の投資意欲が消えれば、中長期のマイナス影響も広がってくる。コロナウイルスはゼネコンバブルの転機をもたらそうとしている。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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