名古屋マラソン大会で介護タクシー巡る疑惑 国際マラソン大会の救護態勢に数々の問題が判明。

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名古屋では昨年の大会に18台の介護タクシーが初参加。今年はさらに拡大して34台が参加し、けが人など30人以上を搬送したという。しかし取材で確認したところ、少なくとも13の参加事業者は民間救急の認定を取得していなかった。冒頭の業者のように最低限の講習すら受けていない業者もあれば、講習を受けた乗務員に交付される「適任証」は持っているが、車両を含めた申請を怠っていたり、大会までに登録が間に合わなかったりした業者も。また、本来は愛知県内で営業できない岐阜ナンバーの車両も最低3台確認できた。

大会実行委員会は、公式サイトで「すべての救護所に民間救急搬送車を配置し、傷病者を医療機関およびフィニッシュ会場へ搬送します」とうたっていた。これに偽りはないのか。実行委側は「患者等搬送事業者制度は、認定がなければ患者を搬送できない制度ではない。本大会車両が認定を受けていなかったとしても何ら問題はない」と反論する。

しかし、疑問点はこれにとどまらない。

今回、実際に車両を手配したのは名古屋市に本部を置く一般社団法人「福祉・介護移送ネットワークACT(アクト)」。電話やメールで介護タクシーの予約を受け付け、配車するコールセンターを運営している。元名古屋市議が2年前に開業し、現在は約30のグループ事業者を擁する。

運輸局も重大な関心

実行委はアクト側に事業者の調整や運行管理などを委託し、委託料を支払っていたことを認める。ところが事業者側からは「ボランティアのつもりなのでまったくの無報酬だった」「搬送に伴う高速道路代などの実費だけは受け取った」との証言が出てくる。

さらに、実行委は自力で帰宅できなくなったランナーが出た場合、事業者が自宅や駅へ有料で送り届けることを促していた。救護所の業務を停滞させないためだという。その際は「救護」の幕を外し、事業者がランナーと個別契約をするよう指示しており、これは完全に「営業」の範疇に入ることになる。

「営業ナンバーである以上、許可条件以外の用途に車両を使うのはおかしい」。関東、中部、近畿の各運輸局に問い合わせると、いずれの担当者も疑念を隠さなかった。

「健常者のみを搬送」「営業所以外での運送引き受け」「区域外での運送業務」など法令違反の可能性が続々浮上する。「こうした話は今まで聞いていなかった。実態を調べないといけない」と、中部運輸局愛知運輸支局も調査に乗り出す意向を示した。

今年2月の「東京マラソン」でも、緑ナンバーの介護タクシー3台を含む27台が救護車として出動している。ただし、これは普段から東京消防庁認定の民間救急車を手配する公益財団法人「東京防災救急協会」を介しての出動要請だった。つまり、前ページに示した例外要件「消防機関または消防機関と連携するコールセンターを介して、患者等搬送事業者による搬送サービスの提供を受ける」という運輸局の例外要件を満たしているわけであり、アクトのコールセンターと同列には論じられない。

アクト代表の元市議は「実行委を通して対応する」として直接取材に応じていない。市民マラソン大会と介護タクシー事業。どちらも不透明さがあってはならないだろう。疑惑の解明が求められる。

週刊東洋経済2014年4月5日号3月31日発売〉核心リポート02

関口 威人 ジャーナリスト

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せきぐち たけと / Taketo Sekiguchi

中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で環境、防災、科学技術などの諸問題を追い掛けるジャーナリスト。1973年横浜市生まれ、早稲田大学大学院理工学研究科修了。

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