新社会人は覚えたい「もらえる年金の増やし方」 「年金はどれくらい頼りになるか」を知ろう

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中には「年金額」の問題ではなくて、「そもそも自分たちがもらうときには、支払う原資が底をついて年金がもらえないんじゃないの?」という心配もよく耳にします。

「日本の公的年金制度は賦課方式である」と習うときには必ず、人数が増えていく高齢者を現役世代が必死に下から支えている図を何度も見せられますから、どうも現役世代の保険料だけで高齢者への支払いを賄っているという間違った収支イメージがあります。そのうえ「年金財政は毎年大赤字で、これまでの年金資産をガンガン取り崩している」などという誤解もあります。

実際のところをデータで見てみましょう。2017(平成29)年度の年金収入は、約52兆7000億円でした。内訳は、現役世代の保険料が3.5割、勤務先の会社の保険料もほぼ同額なので合わせて約7割、加えて税金等国庫から2割強が投入されています。

一方、給付総額は約52兆4000億円でした。約52兆7000億円の収入に対して給付が約52兆4000億円ですから、黒字だったのです。それ以前の数年をみても、単年度の年金財政の収支は黒字でした。年金資産を取り崩さずに支払いができている状況です。

「今の自分」に投資して「稼げる人」になろう

さらに、年金資産のほうも人口動態推計から高齢化が進むことは昔からわかっていましたから、今の高齢者が若かった頃から将来の年金支払いに充てるために黒字分を積み上げてきました。その貯めてきた年金資産が198兆円もあります。

それに、この金額はあくまでも年金支払いの原資ではなく、毎年の年金財政の収支が赤字になったときに補填するための貯金、いわば「バッファー」なのです。今後、現役世代が減り、保険料収入が減る局面では、これを少しずつ取り崩しながら、100年程度かけて支払いに充てていけるようになっています。

この積立金、その大半を2001年からGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が託され運用しています。2019年度は新型コロナウイルスの影響により、2020年2月以降世界的に株式市場が大幅下落したことから運用結果はよくないと思われます。マスコミで騒がれるかもしれませんが、それほど不安になる必要はありません。

過去をみるとリーマン・ショックの2008年度はマイナス8%でしたが、2012~2014年は毎年プラス10%程度であり、2001年からのトータルでは2019年末時点において収益率は年3.23%、累積収益額は75兆2000億円にも上っていました。少し長い目で見守っていけばよいと思います。

公的年金への不安は少し和らぎましたでしょうか? 私が新社会人の皆さんにあえて公的年金のことを書こうと思ったのは、老後について過大な経済不安を抱いて、「今の自分」に投資することに萎縮しないでほしいと思ったからです。公的年金の額は、あなたが稼げる人になることで増えていきます。ぜひ、自分の可能性を信じ、素敵なキャリアを重ねてください。

大江 加代 確定拠出年金アナリスト

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おおえ かよ / Kayo Oe

大手証券会社に22年勤務、サラリーマンの資産形成にかかわる仕事に一貫して従事。退社後、夫の経済コラムニストである大江英樹氏(株式会社 オフィス・リベルタス 代表)を妻として支える一方、確定拠出年金の専門家としてNPO確定拠出年金教育協会 理事、企業年金連合会 調査役として活動。野菜ソムリエの資格も持つ。

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