「条件付き現金給付」の筋が恐ろしく悪い理由 コロナ禍の緊急経済対策はどうあるべきか

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緊急事態宣言によって発生したもう一つの難題が、営業自粛で生じる損失の補償問題です。野党などからは「要請と補償はセットで」との批判が出ています。

実際、営業自粛すれば、売り上げがなくなってしまう半面、家賃や光熱費、維持費は払う必要があります。また、従業員への給与の支払いもあります。使用者側の休業手当支払い義務がどうなるか、まだはっきりしません。

これに対して、特措法担当の西村康稔・経済再生担当相は「一律に補償は難しい」としていました。営業自粛は要請であって強制ではないからだ、との論理です。

安倍晋三首相は4月7日の衆議院議院運営委員会で、緊急事態宣言で営業休止を求められた事業者などへの損失補塡は「現実的ではない」と否定しました。

実際、補償にまともに取り組もうとすれば、経済的損失は巨額になる可能性があります。これを判断する基準として、アメリカの場合は第2四半期(4〜6月期)のGDP(国内総生産)が3~4割程度減るという予測がなされています。

日本の場合、営業自粛対象や期間がアメリカとは異なるので、これほどの規模になるか、わかりません。しかし、GDPの数割の規模になることは十分考えられます。これほど巨額の損失を国が補償することなど到底できません。

「要請でも補償」はすでに約束済み

ただし、いうまでもないことですが、「規模が大きいからできない」という論理は通用しません。また、「自粛は要請であって強制ではないから、補償の義務はない」も同様です。

この論理はすでに破綻しています。なぜなら、2月に休校要請を実施したとき、その影響で仕事を休まざるをえなくなった保護者への休業補償を行うとしたからです。また、上で述べたように、政府は困窮世帯への現金給付をすでに決めています。これと、自粛要請で売り上げが減少する事業者との公平をどう確保するのでしょうか。

この問題は極めて難しいものです。ライブハウスや映画館、バー、ナイトクラブなどだけの問題ではありません。生活必需品以外の幅広い小売店が自粛の対象となるからです。

しかも、関係者まで含めれば、収入減少者の範囲は極めて広くなります。例えば、書店が営業できなくなれば、出版社やその関係者の収入も減少することになります。そのうえ、事態は急を要します。手元に現金がなくなれば、事業は倒産してしまいます。

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