サービス業は「日本の低生産性」の主犯ではない 「サービスはタダ」と低生産性には関係がない
一方、サービス業に関しては、「アメリカのサービス産業は、生産性は高いかもしれないが、サービスのクオリティはひどいもので、雑なんてものじゃない。逆に、日本のサービスは非常にきめ細かく、かつ丁寧なので、生産性が低くなってしまうのだ」「日本人は無形のサービスに対して対価を払う習慣がなく、チップを払う文化もないので、生産性が低いのだ」のような意見が見られます。
この考え方の延長として、「サービス業の生産性を高めると、日本のサービス業のレベルが下がる」と言われます。「宅配便の再配達をしてもらえなくなるよ」などが代表的な意見です。
日本のサービス業の生産性が他の国に比べて著しく低い、これは疑いようのない事実です。そして、日本のサービスは非常にきめ細かく丁寧です。これも事実でしょう。
しかし、本連載でも繰り返し述べているとおり、先に述べたような日本の文化や国民性が、日本と他国との生産性の違いにどれほど影響を及ぼすものなのか、まずはキチンと因果関係と関連性を確認するべきです。要するに、宅配便の再配達が無料なのは、生産性が低いことの原因なのか、生産性とは関係のない特徴なのかを確かめるべきです。
結論から言うと、日本のサービス業の生産性が低いことと、国民性や文化的要素はほぼ無関係です。理由をこれから説明します。
製造業の生産性が高いのは「規模が大きい」から
まず、なぜ日本でも製造業の生産性が比較的高水準なのか、この点から考えてみましょう。
日本の製造業の生産性が高い最大の理由は、製造業の企業は規模が大きいから、これに尽きます。日本の製造業の1社当たりの平均従業員数は24.8人です。全業種平均の13.0人の1.9倍と、圧倒的に多いのです。
大企業に限ってみると、全業種平均は1307.6人ですが、製造業では1679.9人です。中堅企業では製造業の従業員数は全業種平均の約2倍、小規模事業者でも製造業の従業員数は全業種平均の1.9倍です。
要するに、製造業は規模が大きいので社員1人ひとりの専門性も高くなり、重複投資も減るため効率よく稼げる、すなわち生産性が高くなるのです。
製造業が他の業種に比べて規模が大きいのは、全世界で共通して確認できる傾向です。なぜ製造業の規模は大きくなるのでしょうか。その理由の1つに、製造業は工場や機械など製造設備が必要で、大きな固定費が必要なことが挙げられます(他の理由は、本連載の中で別途紹介します)。
建設業なども含んだ日本の製造業の平均従業員数は17.2人です。これはサービス業の平均11.7人の1.47倍です。生産性はサービス業の468万円に対し、製造業は717万円なので、1.53倍です。
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