「東京志向」だけでない、糸魚川の新幹線活用法 金沢・富山への新幹線通学が定着してきた

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日本海ひすいラインには、忘れがたい思い出がある。

筆者は北陸新幹線(長野―金沢間)開業の翌日、2015年3月15日に初めて、「かがやき」を東京から金沢まで利用した。そして、歓喜に沸く金沢や富山を確認しながら、並行在来線3社(IRいしかわ鉄道・あいの風とやま鉄道・えちごトキめき鉄道)を乗り継ぎ、2日かけて直江津、そして上越妙高まで移動した。

えちごトキめき鉄道の泊駅。後方にあいの風とやま鉄道車両が見える=2015年3月(筆者撮影)

あいの風とやま鉄道と、えちごトキめき鉄道の乗換駅は、境界の無人駅・市振駅(糸魚川市)ではなく、西隣の泊駅(富山県朝日町)だった。2両編成の電車から、その前方に入線していた1両編成のディーゼル車に同じホームで乗り継ぐ方式に、やや驚いた。少し手狭な印象の車両は7割ほど埋まり、その多くは鉄道ファンのようだった。

糸魚川で途中下車し、30分ほどかけて駅周辺や海岸線を見て回った後、「1本後」の列車に乗るつもりでホームに戻った。しかし、そこにいたのが先ほど乗ってきた車両だったことを知り、驚きが重なった。筆者は30分にわたる停車時間の間に、途中下車して駅周辺を探訪していた格好だった。

その後、多少の乗り降りがあり、列車は空席を少し残した状態で直江津に向かった。しかし途中の能生駅で、どっと制服姿の若者が乗ってきた。車内は通路までびっしり埋まった。駅の近くにある新潟海洋高校の生徒たちだったらしいことを、後で知った。

混雑の中、男子生徒の1人がつり革にぶら下がって、ため息をついた。「昨日、乗った先輩は、列車がぱんぱんで乗りきれなかったらしい。なんで、俺たちがこんな目に遭うんだ。新幹線ができたって、俺たちには1つもいいことなんかない…」。あの日から5年、ダイヤや車両の運用は改善されたと聞くが、この時の高校生は今、どこでどうしているのだろう。

新幹線通学から地元就職へ

2019年秋、筆者は青森学術文化振興財団の助成事業で北信越地方を訪れ、4年半ぶりに並行在来線に乗り、糸魚川市など沿線自治体への聞き取りも行った。そして、新幹線開業が市民生活をポジティブな方向にも変えていることを確認できた。

最も大きな変化と感じられたのは、新幹線通学の定着だ。市は2016年度、人口減少対策の一環として、通学定期の50%を助成する「糸魚川市地元で頑張る大学生等新幹線通学応援事業補助金」制度を新設した。限度額は年間50万円で、金沢や長野に通学すると、ほぼ上限になる。

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