「東京志向」だけでない、糸魚川の新幹線活用法 金沢・富山への新幹線通学が定着してきた

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糸魚川地域で活発化した地質活動の産物の1つが、緑色を帯びた石・ヒスイ(翡翠)だ。糸魚川市のサイトによれば、当地のヒスイは約5億2000万年前に生成され、「世界最古のヒスイ」と呼ばれている。日本鉱物科学会は2016年、それまで定めがなかった「国石」としてヒスイを選定した。

日本海口の前に立つ奴奈川姫の像=2015年3月(筆者撮影)
糸魚川駅前のヒスイ原石=2019年9月(筆者撮影)

駅周辺には、ヒスイの原石をはじめ、糸魚川地域でみられる岩石や、「姫川」の名の由来となった、『古事記』にも出てくる「奴奈川姫」(ぬなかわひめ)の像などが並ぶ。

神秘的な色をたたえるヒスイは、縄文時代から、人の心をつかんでいたようだ。糸魚川産のヒスイは、はるばる北海道や沖縄まで運ばれていたことが、各地の調査によって裏付けられている。

筆者の実家近く、青森市の三内丸山遺跡からは、縄文時代中期(約5000~4000年前)中ごろの、糸魚川産ヒスイの「大珠」(おおぶりの石)が出土している。直径6.5cm、高さ5.5cm。子どもの握り拳ほどもある。

日本海に迫る山塊

糸魚川市は新潟県の西端、大きな区分では上越地方に属する。しかし、平野が広がる上越市とは地勢が全く異なり、北アルプスにつながる親不知などの断崖が海岸線に迫る。本州の東西を隔てる巨大な山塊の合間に、糸魚川市街地が広がっている形だ。国勢調査によると、市の人口は最盛期の敗戦直後、8万人弱を数えた。現在はほぼ半減し、約4万2000人だ。

市中心部に立つ糸魚川駅は新幹線と在来線の駅が併設され、JR大糸線と、JR西日本から経営分離された並行在来線・えちごトキめき鉄道が乗り入れる。駅の南口は「アルプス口」、北口は「日本海口」。新幹線駅にはあまり例のないスケール感の名だ。

アルプス口には、新幹線開業に合わせて交流施設「糸魚川ジオステーション ジオパル」が整備され、ジオパーク関連の展示が充実しているほか、大糸線で活躍した車両や鉄道ジオラマなどを楽しめる。「鉄道を移動手段としてだけ捉えず、駅前周辺のにぎわい創出の手段としても活用しています」と同市建設課。5月からは、かつて北陸線を走った寝台列車「トワイライトエクスプレス」の再現車両が展示に加わる。

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