「東京志向」だけでない、糸魚川の新幹線活用法

金沢・富山への新幹線通学が定着してきた

東京駅を発した北陸新幹線がようやく日本海に出合うのは、約320kmを走った後の糸魚川市域だ。しかも、トンネルが続くルートのうち、多少とも「海らしさ」を感じつつ車窓に見入ることができるのは、糸魚川駅の前後12kmほどの区間にほぼ限られる。

北陸新幹線・糸魚川市付近の略図。トンネル区間が多い(地理院地図から筆者作成)

新幹線開業に伴い、東京と糸魚川の所要時間は最短1時間59分と約30分短縮され、上越新幹線・越後湯沢駅での乗り換えも解消された(ただ、最新ダイヤの最短所要時間は2時間5分とやや長くなっている)。

列車の本数自体は在来線特急と大きく変わらないが、始発時間が繰り下がるなどの効果もあり、利便性が格段に向上した。加えて、金沢との行き来も便利になった。

大きな問題は県庁所在地・新潟市との往来だ。かつて、新潟市と糸魚川市の間は、特急「北越」が5往復、片道2時間余りで行き来していた。市の資料によれば新潟県庁までは直線距離で140km、現在は在来線を乗り継いで約2時間30分かかる。一方、北陸新幹線を使った場合の時間距離は、長野県庁(直線距離52km)が約30分、富山県庁(同70km)が約30分、金沢県庁(同120km)が約50分だ。

北陸新幹線の開業前、新潟県は「2014年問題」と題して、開業に伴う県土分断への対策を検討していた(2015年9月15日付記事「北陸新幹線開業で露呈した上越の『悩み』」参照)。だが、その後は、最速タイプの「かがやき」が県内に停車しないことへの不満がわき上がったものの、「2014年問題」という言葉に接する機会はほとんどない。しかし、糸魚川市はまさに、この問題が進行中だ。

並行在来線の経営分離の影

地元にとって、新幹線開業以上に影響が大きいのが、JRからの並行在来線の経営分離だ。

信越線の長野―直江津間と北陸線の直江津―金沢間は、県境で区切られて県ごとに第三セクターへ移行した。新潟県内の区間は旧信越線がえちごトキめき鉄道「妙高はねうまライン」、旧北陸線部分が同「日本海ひすいライン」となった。全国の並行在来線のうち、2路線を抱えているのは、同鉄道としなの鉄道だけだ。

日本海ひすいラインには、日本海にちなんだデザインのディーゼル車が運行されている。鮮やかな濃い青の彩色が印象的だ。ただ、沿線人口が少なく需要も大きくはない。同社が公開している2018年度の資料によれば、日本海ひすいライン11駅の1日平均乗降人員は、糸魚川駅が653人、糸魚川市東部の能生駅が325人、同じく西部の青海駅が137人など、100人以上は3駅にとどまる。

一方、妙高はねうまラインの10駅は高田(上越市)の2301人を筆頭に、直江津(同)1537人、新井(妙高市)1003人、上越妙高(上越市)934人など、全駅が100人を超えている。乗車人員の単純合計も約6倍の開きがある。

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