簡素化の流れ加速「葬儀業界」コロナ禍の苦悩 各社の対応と影響ははたしてどのくらいか

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では、こうした影響に対し、各業者はどう対応していくのだろうか。

ケータリング業者Y社は、「葬儀社向けのケータリングを行っているが、一般の人向けのパーティーなどのケータリングは大幅に落ち込んでおり、すぐにカバーする方法はない」としたうえで、次のように話す。

「葬儀が小規模化することにより、葬儀社は、売り上げを維持・アップしていくためには、顧客満足度をもっと上げていかなければならないということで、接客サービスに力を入れている。ケータリング業者は、花屋、ギフト屋と違い、葬儀で唯一、お客さんの前に立つ葬儀関連業者であり、われわれも葬儀社に準じて、お客さんをおもてなしして喜んでもらえる接客をしていかなければならない」として、接客サービスのレベルを上げるための研修・実習に時間を割いていきたいという。

また、葬儀社に対しては、「遺族や参列予定者が望む葬儀ができなかった場合には、コロナの影響が収束後、改めてお別れ会を開催することを案内してくださいと提案している」と語る。

葬儀専門業者の取り組み

葬儀専門業者D社は、「葬儀の小規模化は以前から顕著であり、仕入れやコストなどの見直しにより十分対応力を備えてきた。しかし、自粛期間はかなり長期化することが予想されるので、新しい策を考えなければならない」と語る。新しい策としては、通夜において遺族が小さな会食の場を設ける提案をしたり、通夜振る舞いの料理に代わる持ち帰り品を用意することなどを検討しているという。

中堅ギフト業者K社は、「売り上げは前年同期をキープできているものの、コロナの影響は少なからず出ており、今後さらに拡大する恐れがある。そこで、いろいろな対応策を検討している」とし、具体的には次のように話す。

「まずはコスト削減を検討する。ギフト製造費の見直しや配送の効率化を図りたい。また、オリジナル商品の開発により取引先を増やすことを強化したい。さらに、既存の取引先には新たな商品提案を行い、売り上げアップを図りたい」

新たな商品提案としては、「通夜振る舞いを行わないところが増えてきているので、それに代わるものとして持ち帰れる惣菜などの提案。また、供花に対する返礼品の専用カタログをつくり、提案することも計画している」と明かす。

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このように、当初は「コロナの影響が収束するのを待つしかない」としていた業者も、影響が長期化する様相を呈してきたことにより、対応策にも真剣味が増してきている。

取材後の3月31日、愛媛県は、同じ通夜・葬儀に参列していた4人が新型コロナウイルスに感染したと発表した。葬儀業界では「参列者数は一段と減少する」との見方が少なくない。

また、「コロナの影響が長期化し、葬儀はこれでもいいのだと考えるようになってしまうのがいちばん怖い。現在主流の家族葬でも親族も呼ばずに、家族だけでもよい、あるいは直葬でもよいということになってしまうと葬儀業界はさらに大変になる」との懸念の声も強まっている。

塚本 優 終活・葬送ジャーナリスト

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つかもと まさる / Masaru Tsukamoto

北海道出身。早稲田大学法学部卒業。時事通信社などを経て2007年、大手終活関連事業会社の鎌倉新書に入社。月刊誌の編集長を務める。2013年フリーライターとして独立。ライフエンディングステージの中で「介護・医療」と「葬儀・供養」分野を中心に取材・執筆している。ポータルサイト「シニアガイド」に「終活探訪記」を連載中。「週刊高齢者住宅新聞」などに定期寄稿。

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