国民との対話で合意形成、骨太2006の旗は降ろさない 伊藤達也首相補佐官

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 そして、国民会議と銘打っている以上、国民が自分の問題として考えられるようなさまざまな論点をこなしていく。さらに、制度横断的な骨太な議論を展開することにより、国民とキャッチボールできるような、今までの審議会とは違った議論も必要です。インターネットなど新たなコミュニケーションのツールも活用しつつ、国民の方々の意見を吸収する、あるいはこちらから情報発信して皆様に考えていただくフィールドを用意できないか、一生懸命考えていきたい。

対立の構図は不毛、国民の合意は可能だ

--伊藤補佐官自身は上げ潮派を自認するとともに、増税については反対の立場を取っていますが、そうした考え方は社会保障国民会議には反映されますか。
 
 成長派vs.増税派といった対立の中でこの問題を考えていくことがいいことかといえばそうではないし、その見方自体が一面的だと思う。行政にムダがあればそれを正していくのは当然のことだし、大きな借金を次の世代に残さないことも当然の議論です。その中で、社会保障のあるべき姿や政府が果たすべき役割を描き、給付やサービスの水準と負担のバランスについて議論を深めていくことができるのではないでしょうか。

そのためにも、重要な論点をすべてテーブル上に載せて、国民の皆さんの目に見えるところで実感を持ってもらえるような議論が必要だと考えている。その中で私の経済財政運営の考え方についても、理解してもらえるのではないか。

--先ほどの話の中で、骨太方針2006が政府与党の政策のバックボーンになって
いるとのことでした。議論によっては修正もメニューとして出てきますか。

 重ねての話になるが、骨太方針2006をなぜ策定したか、その原点を大切にしなければならない。それは何よりも、日本の経済財政運営に対する信認を確保することにある。この信認が崩れてしまうと、リスクプレミアムがカサ上げされ、国民経済に大きな影響を与えてしまう。その点をよく留意すべきです。その中で、社会保障を含めた歳出や財政のあり方が問われている。
 
 それだけに、骨太方針2006は堅持していくことが非常に重要です。その一方で、毎年度のローリングの中で、全体の枠組みを壊さずに目標達成のための判断をしていくべきだと思います。

--社会保障を管轄する厚労省は組織のあり方も問われています。社会保険庁の解体に続き、経済財政諮問会議の民間議員からは、保育行政を幼稚園とともに内閣府に一元化すべきとの提言が出ています。

組織論までお話しできる立場にはないが、二重行政に対する批判があるということではないか。そうした背景にある議論を十分に把握し、実態を検証していく。国民や利用者の立場に立って、何が最善で最適かを議論することが大切です。
(聞き手:岡田広行記者 撮影:今井康一 =週刊東洋経済3月15日号より)

profile
いとう・たつや●1961年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。松下政経塾などを経て、93年衆議院議員。2002年内閣府副大臣(金融担当)、04年金融担当大臣に就任。06年衆議院財務金融委員会委員長。08年2月内閣総理大臣補佐官(社会保障担当)。

伊藤達也氏の字体は、正しくは「藤」はくさかんむりが真ん中で切れた字体、「達」は「幸」にしんにょう

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