国民との対話で合意形成、骨太2006の旗は降ろさない 伊藤達也首相補佐官
福田康夫首相が、社会保障分野の担当補佐官に、「上げ潮派」の伊藤達也氏を抜擢した人事が自民党内で波紋を呼んでいる。社会保障費の圧縮を盛り込んだ「骨太方針2006」堅持が持論の伊 氏は、社会保障改革の舵取りをどう進めるのか。また、「社会保障国民会議」の議論を通じて国民の合意をどう取り付けるのか。キーマンを直撃した。
福田康夫首相の肝いりで発足した「社会保障国民会議」(吉川洋座長)。同会議を管掌する社会保障担当の首相補佐官に伊藤達也元金融担当相(衆院議員)を任命した人事は、自民党厚生族の反発を招く一方、首相の真意をめぐり世の中の関心を集めることにもなった。伊藤氏はかねてから小さな政府や経済成長を重視する「上げ潮派」を自認し、「2011年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化のための増税は不要」「財政再建を理由に安易に増税を実施すべきでない」と発言してきた。
そのうえで、「超高齢社会を目前に、長期的には社会保障のあり方、税制改革は避けられない」とも述べている。社会保障政策のカギを握る伊e氏に、社会保障国民会議のあり方や自身のスタンスについて聞いた。
--就任に当たっての抱負は。
福田総理のリーダーシップを、総合調整的な視点からきちんと補佐していきたい。国民の目線で制度横断的な骨太な議論をしていくことが大事です。これからの社会保障制度では、1,効率性(制度間の重複やムダを省き、本当に必要なものに必要な支援が行われるよう制度が統合されていること)2,信頼性(行政が公平かつ的確に行われること)、3,柔軟性(多様な人々を幅広くカバーし、特定のライフスタイルを選択する者が不利にならないようにすること)、4,持続可能性(制度の将来性に疑義が生じないように、透明性の向上と明確なコミットメントを図ること)、5,分権化(地域や民間がより中心的、主体的に参加し、国民の目線に立った創意工夫が現場で生まれるようにすること)--の五つの点に留意が必要で、今までの社会保障が想定していた社会や経済のあり方、財政状況をしっかり検証していきたい。
--社会保障制度についてどのような問題意識を持っていますか。
ほかの国が経験したことのないスピードで少子高齢社会に突入する中、活力と誇りに満ちた国づくりを進めるための社会保障制度の役割があるんだと思う。働き方や家族の変化など新しい動きも踏まえなければならない。これからの社会の担い手になる人々の意見も踏まえて議論していく必要があります。
--社会保障をめぐる議論では、財源調達問題が最大のテーマになった。伊藤さんの持論は、増税なしでのプライマリーバランスの黒字化を目指すべきというものです。一方で舛添要一厚生労働相や医療、福祉をはじめとする社会保障関係者の間からは、その前提である「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(いわゆる「骨太方針2006」)に盛り込まれた社会保障の自然増削減(5年間で1兆1000億円の伸びの抑制=国の一般会計予算ベース)は困難との声が挙がっています。