中国の「母子感染」が示す乳児のコロナリスク 適切に隔離されず1歳未満の感染が続々発生

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本来、母親は指定病院でウイルス感染の検査結果を待ち、転院して治療を受けるべきだった。だが病院は、感染リスクが高い新生児を隔離せず、出産当日に両親が新生児を連れて帰ることを許可したのだ。出産翌日の2月1日、母親は新型コロナウイルス肺炎と診断され、2月5日には生後5日の男児も発熱し、陽性と診断された。

妊婦・新生児向けガイダンスはなかった

なぜ男児を隔離しなかったのか? 同病院のあるスタッフは、「当時は、母親が新型肺炎患者であれば子どもも感染するかどうかは確かでなかったし、そう言われていなかった」と話す。病院側の説明によると、1月末時点で、国家衛生健康委員会の診療プログラムにはまだ、妊婦や新生児に関するガイダンスがなかったという。

同病院はさらに、「男児は誕生後はまだ症状がなく、現地の隔離対象の要件や、核酸検査を行う基準も満たしていなかったため、男児の退院に同意した」と説明。母親の感染が確認されると、病院は男児の状態を非常に心配しはじめ、2月4日にようやく男児の自宅に向かい、核酸検査のサンプルを採取したのだった。 

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2月2日、国家衛生健康委員会は『小児および妊産婦の新型コロナウイルス肺炎予防管理に関する通知』を発表。小児や妊産婦が新型肺炎にかかりやすいことを初めて明らかにし、保護と診療に関する助言を行った。

感染拡大初期の予防策のさまざまな不備により、乳児感染者は1月末から増えはじめた。乳児は喋ることができず、コミュニケーションが取れない。身体の各機能も未発達だ。どうやって治療すればよいのか。医療現場には難題が投げかけられている。

(財新記者:黄恵肇、曾悠君)
※敬称略。『財新週刊』3月30日発売号掲載記事より抄訳

財新編集部

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Caixin

2009年設立の財新は中国の経済メディアとして週刊誌やオンライン媒体を展開している。“独立、客観、公正”という原則を掲げた調査報道を行い、報道統制が厳しい中国で、世界を震撼させるスクープを連発。データ景気指数などの情報サービスも手がける。2019年末に東洋経済新報社と提携した。(新型肺炎 中国現地リポート「疫病都市」はこちらで読めます

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