中国の「母子感染」が示す乳児のコロナリスク 適切に隔離されず1歳未満の感染が続々発生

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乳児が新型コロナウイルスに感染するのはなぜか? 多数の疫学調査(訳注:地域や集団内で、疾患などの発生原因や変動するさまを明らかにする調査)によると、家庭内の濃厚接触が主な原因の1つだ。

前出の小児内科医・崔玉霞は、「小果は1月16日から24日までの間、両親に連れられて、親戚に会うために湖北省安陸市黄荆山を訪れていた」と話す。家族の集まりでは、武漢から来た2人の親戚にせきや発熱といった症状が見られた。(小果を含む)親子3人は、そこで新型コロナウイルスに感染したのだ。

産後支援ヘルパーから感染した生後17日の新生児もいる。新生児の発症1週間前にヘルパーが世話に来たが、ヘルパーは間もなく新型肺炎と診断され、新生児も感染した。

コロナの母子感染リスクで"百家争鳴"

多くの乳児、特に生まれたばかりの新生児が新型コロナウイルスに感染したことを受けて、世論は母子感染(垂直感染)のリスクが存在するかどうかに注目している。

母子感染とは、病原体が親から子へと伝わることを指す。妊娠中の胎盤感染や、出産時の産道感染、産後の母乳感染などがある。武漢では生後36時間の新生児が新型コロナウイルスに感染したという報道もあり、母子の安全への関心が高まっているのだ。

新型コロナウイルスが母子感染する可能性はあるのか? 

多くの研究チームが、母体と胎児の境界面のACE2(アンジオテンシン変換酵素2)の発現状況に注目している。ACE2は新型コロナウイルスの受容体(レセプター)であり、ウイルスがヒトに侵入する”通路”だ。2月下旬、上海の同済大学医学院の金莉萍教授のチームは、母体と胎児の境界面にあるさまざまな細胞で、ACE2の発現が非常に少ないことを示す論文を発表した。

しかし、その2週間後、中国医学科学院の研究チームが論文を発表し、食い違う見方を示した。同チームは単細胞のシーケンスデータ(訳注:遺伝情報のデータ)を使用し、ACE2が母体と胎児の境界面や胎児の器官の特定の細胞内に広く発現することを発見。これは新型コロナウイルスが母子感染する潜在的な可能性を示唆している。

同論文は、生物学論文のプレプリント・プラットフォーム(訳注:論文原稿を査読前にいち早く公開するためのサーバー)である「bioRxiv」に掲載され、数日後に撤回された。財新記者は執筆者のLi XiangJieに撤回理由を問い合わせたが、回答はない。

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