復興の拠点「常磐双葉IC」が開通した深い意味 3月上旬の開通式には安倍首相も出席した

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Nスペでは、常磐自動車道と三陸沿岸道、つまり被災地の沿岸を通る高速道路全体および東北道とこれらの高速道路をつなぐ横断道も含めた道路を「復興ハイウェー」と位置づけていたが、地域にとっての重要性を考えると、「陸の孤島」と長らく言われてきた三陸沿岸を結ぶ高速道路こそが地元から待ち望まれた道路であろう。

三陸自動車道利府JCT付近(筆者撮影)

私も今から20年以上前に仙台に4年ほど居住したことがあり、仕事で気仙沼や大船渡など三陸沿岸の都市に幾度となく車で出かけたことがあるが、たった1時間程度の打ち合わせや取材に、往復の時間を入れるとほぼ丸一日を費やすというのが、高速道路がなかった時代の行程であった。

沿岸を結ぶ国道45号線や東北道一関ICから沿岸部へ向かう国道284号線などは、当時カーブもアップダウンもきつく、リアス式特有の地形もあって、地図で見るよりはるかに移動時間がかかるのが三陸沿岸の都市へのアクセスであった。

東日本大震災の前から三陸沿岸道の整備は少しずつ進んでいたが、震災後は復興事業に位置づけられ、ここ数年細切れながら相次いで数キロずつ開通し、2020年度中には仙台市から八戸市に至る三陸沿岸道が、全線でしかも全区間無料での開業を迎える。

災害時は鉄道以上の期待を担う

朝の連続テレビ小説「あまちゃん」で描かれた三陸鉄道も沿岸の住民にとっては悲願の鉄路であったことはよく知られているが、水産物など特産品の輸送や大型バスによる観光客の誘致にとって、あるいは災害時のライフラインとして、高速道路は鉄道以上の期待を担うことだろう。

ただし、他の地域に見られるように、高速道路の開通が地域の鉄道の経営に悪影響を及ぼしたり、ストロー効果で過疎に拍車をかけることにならないとも限らない。

仙台へ、そして東京など首都圏へと直結する高速道路をどう活用するか。少しでも復興に資する協力をしたいと思っている私たちにできることは、まずは地域の実情を自分の目で確認しながら、食事をしたり宿泊をして、地域の経済に少しでも貢献することだろうかなどと思いを馳せる。そんな「復興ハイウェー」ではないだろうか。

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