復興の拠点「常磐双葉IC」が開通した深い意味

3月上旬の開通式には安倍首相も出席した

この3月は鉄道関連で、常磐線の9年ぶりの全線での運転再開、山手線のほぼ50年ぶりの新駅「高輪ゲートウェイ駅」の誕生、新幹線ののぞみ1時間当たり12本ダイヤへの改正、伊豆への新型特急「サフィール踊り子号」や近鉄の新型特急「ひのとり」の運行開始などの華やかなニュースが集中し、余計賑わいが少ないように見える。ただし、こちらも新型コロナウイルスの影響で、移動需要が大きくしぼみ、せっかくの華々しいニュースも少々霞んでしまっているのも事実だ。

人口「ゼロ」の町にIC設置

そんな中で、冒頭のNスペでも取り上げられていた常磐自動車道の常磐双葉ICの設置は、一般の利用者、特に観光利用にはほとんど影響しない地味なニュースに見えるものの、実は高速道路に歴史にとっては大きな一歩であると感じる。

3月7日に供用を開始した常磐双葉ICは、地元の双葉町の請願により、自治体も費用の一部を負担して設置されたものであること、また所在地の双葉町は供用開始と同時期に帰宅困難地域からの指定が一部解除されたばかりのところで、現在その地域に住む人口は「ゼロ」人であることは、特筆すべきであろう(実際には7000人近い双葉町の住民が福島県内外の自治体に避難している)。また、たった1つのICの開通記念式典に県知事や国土交通大臣だけでなく首相が参加したというのも極めて珍しい。

こうした場所に高速道路のICが設置されたことは、このICが復興支援の一環であるとともに、福島第一原発の廃炉事業や除染・中間貯蔵施設事業の支援の役割、またあってはならないが、もしまた原発事故が発生した際の緊急避難路の役割も担うなど、これまでにない目的で設置されたことを示しており、あらためて高速道路の果たす使命を考えさせられるものだからである。

常磐道には今も放射線量の表示板が設置されている(筆者撮影)

ICの開通やICから町の中心部へと向かう道路沿いの再整備で、双葉町では復興への動きが加速することが期待される。とはいえ、故郷を離れて既に9年が経過し、避難先で生活を立て直した人も多く、高速道路や鉄道(JR常磐線もこの3月に原発周辺の不通区間が再開され、全線での運転が始まった)の再整備だけで住民が簡単に戻ってくるわけではない。

避難先との往来が便利になっても、それと定住はまた別の次元だからだ。町によるアンケートでは、今も街に戻りたいと答えた住民は1割程度となっており、新設のICが帰還にまでつながるかどうかは未知数であろう。

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