TGVでコロナ患者移送、「走る病院」改装の舞台裏 打診から3日で運行開始、なぜ素早くできた?
日本でも感染拡大が進む新型コロナウイルス。重篤化で重い肺炎を引き起こすため、人工呼吸器の確保が喫緊の課題とされる。そんな中、欧州では感染拡大地域で医療機器が足りないという問題を解決するため、まだ余裕のある地域の病院に高速列車や航空機で重篤患者を移送するという試みが進んでいる。
フランス東部では感染者が急激な勢いで増えているため、周辺の医療機関だけでは対応しきれないと判断。フランス国鉄(SNCF)は、普段は都市間を結んでいる高速列車、TGVを患者移送用に拠出し、国内他地域の病院へと輸送している。
これは、重篤患者の増加により集中治療室(ICU)等の施設が飽和状態になっている「レッドスポット」の地域から、ICUの受け入れにまだ余裕がある地域の医療機関へと患者を移すために行われているものだ。
また、同地域の重篤患者は隣接するドイツやスイス、ルクセンブルクへも搬送し、手当てに当たっている。ドイツはさらに「野戦病院の装備」を積んだ自国の空軍機をストラスブールに派遣。比較的患者の少ないドイツ南部まで空輸し、入院させる対応も行っている。
TGVの固定式座席が奏功
SNCFは、2階建て高速列車「TGVデュプレックス」を、重篤患者を輸送する「移動式野戦病院」に改装。車内は1両当たり患者4人を乗せられるよう、医療機器とストレッチャーを準備した。
TGVの車内は、基本的に1人用または2人並びのシートが床に固定されており、日本の新幹線や特急列車のように回転はしない。したがって、運が悪いと後ろ向きの席がアサインされることがある。
新幹線に乗り慣れている日本人からは、TGVの座席について「高速列車なのに、後ろ向きで乗るのは嫌だ」という批判の声も多いが、動く野戦病院としてTGV車両を使うには、このガッチリとしたシートの作りが奏功。複数のシートの上部に、橋をかけるようにストレッチャーを配置し、患者を載せることにした。
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