ディズニー前CEOが明かす「古い常識」の破り方 「ブラックパンサー」の快挙とジョブズへの回顧
「スティーブにここにいてほしかった」
マーベルへの投資がどれほどの成果をもたらしたかを、スティーブ〔・ジョブズ〕に見てほしかったと心から思う。おそらくスーパーヒーロー映画なんて彼にとってはどうでもよかったかもしれないが(それでも、『ブラックパンサー』と『キャプテン・マーベル』が業界の思い込みを覆したことを、喜んでくれたはずだ)、彼のおかげでアイクを説得でき、マーベルがディズニーのもとで大輪の花を咲かせたことを誇りに思ってくれただろう。
スティーブが亡くなって以来、何かに成功するたび、興奮の最中に「スティーブにここにいてほしかった」という想いがかならず心をよぎった。もし彼が生きていたら交わしたはずの会話を、頭の中で交わさずにはいられなかった。
2011年の夏、スティーブと彼の妻のローレンがロスの私たちの自宅に来てくれて、私たち夫婦と夕食を共にしてくれた。その頃にはスティーブはガンの末期で、ガリガリに痩せ、見るからに痛々しかった。元気はなく、しゃがれ声を絞り出して話していた。それでも、私たちと共に夕べを過ごしたいと言ってくれた。ひとつには、私たちが何年も前に成し遂げたことを祝うのが目的だった。私たちは4人で食卓を囲み、夕食前にワインを掲げた。「偉業を成し遂げたな。2つの会社を僕らが救ったんだ」
4人とも、泣きそうになった。スティーブの誰よりも温かく優しい面が現れた瞬間だった。ピクサーはディズニーの一部にならなければ今のような形の成功はなかったし、ディズニーはピクサーを取り込んだことでふたたび活力を取り戻せた。私は知り合ってまもない頃のスティーブとの会話を思い出し、彼に電話をかけた時どれほど自分が緊張していたかを考えずにはいられなかった。
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