「フィット」と「ヤリス」実際に乗って驚いた違い 同じ小型車でも方向性が大きく変わった理由

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ヤリスは、TNGA(Toyota New Global Architecture)のBセグメント向けプラットフォームである「GA-Bプラットフォーム」へ刷新したことで、定量的な数値の比較として走りのレベルが一気に上がっている。とはいえ、走りの進化の表現の仕方は、実にオーソドックスだ。

乗り味はカッシリとしてハンドリングは軽快。コーナーリングでは、実によくクルマが曲がる。これがトヨタの言う「ワクワクドキドキ、走り出したくなる愉しさ」へと直結する。 

ただし、1.5リッターエンジン搭載車の発進加速時に車内で感じる振動と音は、日本人にとってはやや大きい印象がある。これは、世界市場を見渡した際、必要十分なレベルとしてトヨタが捉えているのだと筆者は理解した。走り全体として、ハイブリッド車の総合点は高いのだが、TNGA採用の恩恵をはっきりわかるのは軽量なガソリン車のほうだ。

販売台数はヤリスが一歩リード

運転支援システムについても触れておこう。

フィットは、画像認識技術を先代までの日本電産エレシス(旧ホンダエレシス)から、イスラエルのモービルアイに変更したこともあり、今後ホンダとモービルアイと連携するサプライヤーとの間で、対応する機能の拡大を目指すと予想する。

「ヤリス」は右折時の対向直進車・右左折後の横断歩行者の検知機能を搭載(写真:トヨタ自動車)

対するヤリスは高度駐車支援システムの「アドバンスト・パーク」や、交差点での右左折時の対向車検知機能など、グループ企業のデンソーと連携した製品がてんこ盛りだ。

フィットの初期受注は、2月14日に発売して3月16日時点で3万1000台(月販目標1万台)。タイプ別に見ると、「HOME」が47%で「BASIC」が 19%。ハイブリッド比率は全体で72%だが、HOMEでは48%、BASICでは12%にとどまっている。

ヤリスは、2月10日の発売1カ月後となる3月9日時点で、3万7000台(月販目標7800台)となった。その内訳は上級グレードの「Z」、中級グレードの「G」がともに約30%で、ハイブリッド車の比率は全体の約45%だ。

フィットとヤリスは、デザインや方向性も違えば実際の売れ方も違う。同じコンパクトカーの中で、ユーザーの選択肢が増えたことは、喜ばしいことではなかろうか。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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