フィットは、日本市場におけるマーケティング戦略で「心地よさ」を強調。これについては、先に掲載した、「フィットとN-BOX、比較で見えるホンダの迷い」に詳しい。そのうえで、ホンダ関係者がフィットの商品性について「柴犬っぽさ」「フランス車っぽさ」という「……っぽさ」という言葉も使う。
決してデザインコンセプトで柴犬をイメージしたわけでも、走り味をフランス車っぽくアレンジしたわけでもなく、「心地よさ」を具体的に表現する場合、結果的に「……っぽさ」となる。
商品を構築するうえでの裏付けを、本田技術研究所の商品・感性価値企画室で構築している。これまでも人間工学や人中心といった分野は、ホンダに限らず自動車メーカー各社が取り入れてきた商品開発の手法のひとつだが、フィットではBセグメントでの差別化要因として「感性」を思いきり引き立てる戦略をとったのだ。
一方のヤリスは、フィットと比べると商品企画(トヨタでは製品企画)の方向性は、オーソドックスな印象がある。
世界情勢の変化に合わせた戦略車に
量産型の記者発表会での吉田守孝副社長(当時)のプレゼンの冒頭は、ヤリスの商品説明というより、事業戦略が優先している印象が強かった。
ヤリス(日本でのヴィッツ)が1999年時点でコンパクトカーの世界標準として認識されていた。1999年に世界自動車市場は販売台数規模で「先進国75.8%:新興国など24.2%」だったが、20年後の2019年には「43.5%:56.5%」と市場情勢が大きく変わったと指摘。
そのうえで、新型の特徴として「躍動感ある凝縮したデザイン」「軽快で気持ちのよい走り」「ヒエラルキーにとらわれない、最新の先進安全技術の投入」の3点を挙げた。さらに、低燃費については「世界トップレベル」という表現を使うなど、世界情勢の変化に対応した戦略車である点を強調した。
エクステリアは、テイストが違うのは当然だが、外からの“パッと見”の大きさ感が違う。ヤリスはきゅっと締まって小ぶりに見えるが、フィットはポワァ~ンとした雰囲気で大きさ感がわかりにくいが「小さい」とは感じない。
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