聖徳太子の密使 平岩弓枝著
毎日芸術賞をとった平岩弓枝の『西遊記』、あの感動をもう一度と言われれば抵抗するのは難しい。出発地は大和で西方へ向かうのは経典のためではなくしかも舟旅。西遊記のパロディでありつつも自由奔放に創作されている。聖徳太子と海神の娘との間に生まれた珠光(たまひかる)王女が太子の命を受けて王子に変装し、知恵の宝を探す旅に出る。お供は3匹の猫たちと愛馬の青龍で、猫たちは必要に応じて若者に化けて戦い、青龍も意外な術を駆使する。
先々には妖怪変化が待ち受け、それを打ち破ることで異国の王子や民が苦難から救われるというお話の連続だが、戦いのいくつかは少々あっけなく終わる。王女たちはさまざまな事柄を学んでいってめでたく帰国するのだが、それより何よりファンタジックな面白さが充満している。愛嬌たっぷりの猫たちなど随所にユーモアが効いているし、文句なく平岩ワールドに遊べるだろう。今回も蓬田やすひろの挿絵が楽しい。(純)
新潮社 1680円
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