今後はコロナウイルスがどこまで拡大するかがボーイングの経営を左右する。日本航空機開発協会の2019年3月の予測によると、世界中で飛行するジェット航空機は2018年に約2万4000機だったが、2038年には約4万機に増えるという。退役する旅客機の更新需要があるため、2038年までに3万5000機の新たな航空機の納入があるという。
だが、納入先である肝心の航空会社の経営はコロナウイルスの拡大で厳しさを増しており、LCCを中心に倒産する会社が出てくる可能性もある。業界関係者の間では、2021年初めには感染拡大による負の影響がなくなるとの希望的観測もあるが、世界景気の冷え込みで思ったほど旅客機需要が伸びない可能性は十分ある。
ボーイングのライバル・エアバスはこれまでは業績を伸ばしており、ボーイングがシェアを失う可能性も低くない。
ボーイングの動向に日本企業も一喜一憂
日本企業も失速するボーイングの経営悪化にやきもきしている。ボーイングの大型機「787」は各機材の35%を日本企業が納めている。主翼は三菱重工業、胴体の一部は川崎重工業、エンジン部品はIHI、配電装置はナブテスコといった具合だ。
旅客機内で使われる787向けギャレー(キッチンシステム)はジャムコが独占。トイレなどのラバトリーを含め、ボーイング向けでは圧倒的なシェアを誇るが、それだけにボーイングの生産機数が減少すると大きな影響を受ける。
2020年1月を最後に生産が止まっている737MAX向けの日本企業の納入比率は787より低く、各社は「生産停止の影響は大きくない」と口をそろえる。ただ、頼みの787も、作りすぎを理由に月産機数を2019年の14機から12機に絞る予定だ。減産ペースはさらに加速し、2022年には月産10機ペースに落ちる。コロナウイルスの拡大で航空会社の経営が傾けば、さらなる需要縮小と減産を迫られる可能性もある。
ただ、顧客としてのボーイングも「官公庁並みに金払いはしっかりしていて、入金が遅れたこともない」(航空業界関係者)と、信頼できる取引先だという認識が広がっているのも事実だ。ボーイングに対しては、結局はアメリカ政府が何らかの支援をするだろうという見方も強い。
別の航空業界関係者は「コロナと737でダブルパンチになっているが、それを超えるとV字回復も見込める。問題は一時的な冷え込みにどこまで耐えられるか」と語る。
2003年のSARS流行時も、急激に冷え込んだ需要が感染収束後に一気に増えた。そこまで耐えられる体力があるか。ボーイングは正念場に立たされている。
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