ボーイングの資金繰りは行き詰まっている。2019年12月期のフリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの合計)はマイナスの39億7600万ドル。資金不足は253億8900万ドルもの新規借り入れで糊口をしのいできた。
2020年に入っても多額のキャッシュが流出する構造は変わらない。2月に確保したばかりの138億ドルの融資枠も使い切るという。3月17日にはアメリカ政府や金融機関に600億ドルもの支援を要請しているという声明を出した。
自ら招いた財務危機
ただ、ボーイングの危機には「自業自得」との批判も根強い。そもそも、これほどまでに財務体質が悪化したしたのは、株価を重視するあまり、自社株買いや高額配当などの行きすぎた株主還元を進めてきたからだ。
2014~2019年の間に行った自社株買いは総額で406億ドル。配当も193億ドルに及んだ。このため、過去最高純益を記録した2018年12月期でさえも、純資産はわずか4億ドルしかない。自己資本比率は債務超過寸前の0.3%で、737MAXが運航停止になった2019年12月期ですらも、自社株買いで26億5100万ドルと、46億3000万ドルの配当を支払った。
当面、機数ベースで受注残の8割を占める737MAXの運航が見通せない以上、2020年12月の業績も厳しい。売り上げの3割が防衛宇宙分野のボーイングをアメリカ政府が見捨てることは考えにくく、トランプ大統領も「われわれはボーイングを守る必要がある」としている。救済を受けるため、ボーイングは3月20日に当面の配当を停止すると発表。今後は社員の一時解雇(レイオフ)に踏み切る可能性が高い。
民間航空機市場は長期的に成長が見込まれる市場であり、格安航空会社(LCC)の台頭を背景に、ボーイングは順調に売り上げを伸ばしていた。手厚すぎる株主還元も手伝って、株価は右肩上がりが上昇。2014年初に140ドル程度だった株価は、2019年3月1日には446ドルまで上昇した。経営陣は株価上昇につれ、多額の報酬を手にしたとされる。
だが、株価重視の経営は長く続かなかった。業績不振に加えて新型コロナウイルスに伴う金融危機も直撃し、株価は急落。3月に入ってついに100ドルを割った。737MAX問題を受けて、デニス・マレンバーグCEOは2019年12月に引責辞任したが、退任に伴う報酬は6220万ドル、日本円にして68億円にのぼった。
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