「完成度8割」、新型リニア車両「残る2割」は何か 既存車をブラッシュアップ、5月走行試験開始

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乗り心地改良のポイントの1つが、前記の試乗ルポにもしばしば出てきた「耳ツン」対策だ。

鉄道の場合、耳ツンはトンネル突入による気圧の変化で起きるが、リニアのルートの一部の駅間には標高差がある。その急勾配区間を高速で走行すると、高層ビルのエレベーターに乗ったときに感じるような耳ツンが生じるのだ。そのため、車内の圧力変化をいかに緩やかにするかが改良試験車の課題となる。このほかに「ゴーッ」という重低音の対策も必要となる。

電気は「ワイヤレス充電」の原理で

L0系改良試験車では、それまでのリニア車両で採用されていたガスタービン発電装置が非搭載となり、誘導集電方式が全面採用されることとなった。

従来のL0系。防護柵の一部が揺らいでおり、屋根上の排出口からガスタービン発電装置の排気ガスが出ているのがわかる(撮影:尾形文繁)

意外に思われるかもしれないが、リニア車両の空調や客室照明はこれまで、燃料を燃やした燃料ガスで車両に搭載したタービンを回して生じた電気で賄っていた。地上から浮上して走行するだけでなく、パンタグラフがないため、外部から車内に電力を送電する手段がなかったためだ。かつてのリニア車両をよく見ると、屋根上の排出口から排気ガスが出ていることがあったが、これはガスタービン発電を行っていたためだ。

誘導集電とは、地上に設置した地上ループに電気を流し、その上を車両が走ることで磁界を変化させ、車両に設置したコイルに電気を供給する仕組み。「スマホのワイヤレス充電と同じ原理です」(寺井氏)。従来のL0系はガスタービン発電装置と誘導集電装置の両方を採用していたが、誘導集電技術の進歩により、全面採用に踏み切ったというわけだ。

改良試験車は4月上旬に山梨リニア実験線に搬入し、5月末に走行試験を開始する予定だ。車両開発は着々と進んでいる。残る課題はルート。静岡県工区はいつ着工できるのか。2027年の開業に向けて、今年は正念場だ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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