施行阻止論も浮上、貸金業法完全施行の波紋--中小貸金業者は窮地に
金融庁が検討会 交わらない不毛な議論
そんな不安が広がりつつある11月末。霞が関の金融庁に貸金業界や弁護士会の代表者らが一堂に集った。政府が設置した貸金業法の影響を検証する「貸金業制度に関するプロジェクトチーム」(座長・大塚耕平内閣府副大臣)の第1回会議のヒアリングのためだ。
最終施行前の検証作業は同法に規定されていたもの。貸金業界では、これを機に施行延期を期待。一方、弁護士会などは完全施行を唱えていた。
初会合はその通りの展開となった。貸金業協会と消費者金融協会が、業者の激減やローン市場の縮小など法改正によって発生している厳しい実態を報告。一方、多重債務者対策に取り組んできた弁護士会や司法書士会連合会は、多重債務者の減少など施行後のプラス効果を主張、完全施行を強く推した。
完全施行の延期を求める業者側と、予定どおりの実施を求める弁護士側は少しも歩み寄る気配すらない。当然だろう。妥協と歩み寄りは議論の軸が同一であるからこそ生まれる。ところが、一方はビジネス上の理論、もう一方は社会問題解決上の理論での正論を振りかざしている。
「経済政策と社会政策をごった煮にした失敗例」。ある金融庁の官僚が貸金業法についてこう漏らすように、同じ法律の上にまったく軸が異なる者同士が乗って議論している。したがって、早くも「百年戦争」との揶揄が飛び交う始末だ。
しかし、完全施行の日は刻々と近づいている。完全施行となるか、それとも延期となるか。政府は究極の選択を迫られている。
(浪川 攻 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)
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