施行阻止論も浮上、貸金業法完全施行の波紋--中小貸金業者は窮地に
来年6月に完全施行が予定される貸金業法。2007年の施行以降、段階的に規制強化されており、今年6月には貸金業者の最低純資産額引き上げなども始まった。早くもその影響は貸金業者と借り手に影を落とし始めている。
東京・築地市場で仲買い(卸売り)商を営むAさんが初めて「つなぎ資金」確保のために商工ローンのロプロを利用したのは9年ほど前のことだった。「知人の紹介でした。借入金利は二十数%。100万円ほどを短期で借りました」。
もともとは信用組合の融資枠を利用していた。ところが、小泉政権下の不良債権処理や金融再編の過程で、それまで依存してきた地元信用組合の合併や事業譲渡が発生。合併後に誕生した信用組合は以前のような融資枠を提供しなくなった。
仲買い商は市場での買い付け代金を現金で支払うが、競り落とした青果や鮮魚をその日のうちに料理屋などに納めても、代金を得られるのは2~3カ月後。スーパーでも10日後だ。つまり、おカネ(運転資金)の「出」と「入り」にはタイムラグがある。ところが、その間のつなぎ資金に活用していた信組の融資枠がなくなったことで、経営体力の乏しい仲買い商の廃業が続出。かろうじて事業を続けた仲買い商の多くも、つなぎ資金確保のためノンバンクに駆け込んだ。Aさんもそうだった。
最低純資産引き上げで中小貸金業者は窮地に
以後、短期事業ローンを利用して食いつないできたが、そんな“拠り所”の一つであるロプロが今年11月に破綻した。背景にあるのは過払い利息返還請求増大に加えて、2007年12月に施行された貸金業法という逆風だ。倒産せずとも、ロプロのような商工ローンや消費者金融業者の貸し出し能力は改正法による規制強化の影響で著しく後退。借り手にとってもおカネを借りられない状況が強まりつつある。