ここ数年、業績低迷が続くサンリオグループにあって、サンリオピューロランドは一筋の光だ。業績を着実に伸ばし、多くの人の注目を集めているが、これは2016年に館長になった小巻亜矢氏の貢献も大きい。
10年間で来場者数がほぼ倍増
小巻氏は、新卒入社したサンリオを退職後、長く専業主婦をしていた人物。30代後半で同社に「出戻り社員」として再入社し、館長に抜擢されたという異色の経歴を持つ。彼女の就任後、人気が低迷していたサンリオピューロランド来場者数はV字回復。2009年度には約108万人、2013年度は約114万人だった年間来場者数が、2018年度は開館以来初の200万人を突破した。
例えば、平日14時以降の入館なら、大人は2200円、3歳〜17歳は2000円(2歳以下は無料)で楽しめる、「アフタヌーンパスポート」を導入。競合テーマパークの入場料が軒並み値上がりする中でも手頃感があり、以前は閑散としていた平日の客数は、2014年度から4年間の間に約4倍になったという。
小巻氏が就任後に真っ先に取り組んだのは、スタッフ教育の徹底による接客レベルの向上だ。スタッフとの対話を増やし、1日12回もの朝礼を実施した。また、ファミリー客だけでなく、20〜30代女性向けを狙った施策に打って出た。音楽イベントとのコラボレーションも多数行っている。松竹と協業開発した歌舞伎ショー「KAWAII KABUKI ~ハローキティ一座の桃太郎~」も2018年春にスタートし、新たなファンを獲得していた。
筆者は今年1月、家族とともに同施設をプライベートで訪れた。わが家の2歳児は大興奮で、待機列に割り込んで、走り回ってご迷惑をおかけしてしまった。しかし、若いスタッフが「お兄ちゃん、みんな並んでるのよ。順番なの」と、子どもの目を見て対話してくれた。子どもを叱りつけるわけでもなく、スタッフとして「お客様」に過剰にへりくだる様子も見られなかった。「教育」「対話」としての接客には、感動したものである。
こうしたピューロランドの”日常”を知っているファンは少なくないだろう。だからこそ今回の動画施策も、常日頃からのホスピタリティーの一貫であると感じられる。休館中のSNS施策も、「企業PR」としてのいやらしさがない。
サンリオピューロランドの今後の運営について、同社は「再開時期は行政の発表や要請にもよりますが、スタッフ一同、お客様を笑顔でお迎えする準備をしています」としている。
冒頭で紹介したドキュメンタリー映像公開直後、サンリオ本体の株価は前日比+11.07%アップの1425円に(3月23日)。翌24日の終値は1524円をつけた。動画が株価に直接的な影響を与えたとは言い切れないが、日経平均が大幅に下がる中、健闘しているといっていい。
休館中も、ファンへのフォローを忘れず、その熱量を下げないサンリオ。この未曾有のピンチをチャンスにしていけるだろうか。
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