コロナ騒動で光るポーランド人の「切り替え術」 リアルがダメならオンラインがあるだろう

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「とりあえずモノは買えそう」という安心感もあり再び気が緩みそうになったが、13日にマテウシュ・モラヴィエツキ首相が記者会見を開き、国境審査の実施と外国人の入国禁止、国際航空便および国際鉄道便の停止(貨物輸送は従来どおり)、大規模商業施設および飲食店などの営業制限、集会の制限などを発表すると、一気に緊張感が高まった。

最初の措置が発表されてわずか2日後。この時の感染者数はまだ70人以下だった。しかし、何といってもヨーロッパは陸続き。何もしなければあっという間に感染者は増える。チェコなどは3月12日に一部外国人の入国制限などを発表しており、ポーランドも踏み切らざるを得なかったのだろう。数日後、メディアが行った世論調査では、13日に政府が発表した措置は、ポーランド国民におおむね好意的にとらえられていたようだ。

政府は、12日には「Stan zagrożenia epidemicznego(感染脅威事態)」、20日には「Stan epidemii(感染の蔓延)」を宣言している。前者は、大流行のおそれがある、後者はもはやおそれではなく大流行の状態にあるという宣言だ。

3月24日にはついに、外出規制が発令された。「仕事や生活必需品の買い物や犬の散歩など、いくつかの例外規定を除いて外出を制限する」という厳しい発令が。期限は4月11日までとなっているが、延長される可能性は大いにある。一方、政府与党は5月に予定されている大統領選は敢行する構えである。

他人との「適切な距離」のキープに必死

政府発表以降、人々は他人に近づきすぎること、他人が触ったものに触れることに過敏になっており「接触恐怖症」ともいえる状況だ。例えば、トラムは前方の席にロープが張られ運転手に近づけないようになっている。乗り降りするときに押すボタンも手で触れないようにシールで封印されていた。

下記のような注意書きを店頭に張り出したドラッグストアもあった。
・一度に店内に入れるのは10人まで
・現金での支払い不可
・むやみに棚の商品を触らないで
・店員との間には最低1~1.5mの距離をあけること
・できるだけネットで注文を
・本当に必要な商品がある場合だけ店に来て、そうじゃない場合は家にいましょう

ドラッグストアに張り出された“ショッピング時の心得”。店の前には数人が並び、1人店内から出ると1人中に入るというシステムが自発的に出来上がっていた(筆者撮影)

このように、現金での支払い不可・支払いはカードのみとする店が急増。カード払いなら端末にカードをタッチするだけなので、やり取りも簡単だし、現金に触らなくても済むので接触リスクを減らせる、ということなのだろうか。

ポーランドは以前からキャッシュレス決済はかなり進んでおり、フリーマーケットのようなところでもカード払い端末を用意している店は多い。また、銀行のモバイルアプリの機能も充実しており、最近はスマホさえあれば、現金はおろかカードを持ち歩く必要もなくなってきている。

一方、若い人でもキャッシュレス決済ではなく現金で払う人は少なからずいた。今回のコロナ騒動をきっかけに、カード払いに移行する人も増えるのではないだろうか。

そういえば、利用している銀行からは、「モバイルアプリの活用で外出しなくてもオンラインでショッピングをお楽しみいただけます。また、現金払いの代わりに非接触支払いをぜひご利用ください」というようなメッセージがわざわざSNSで届いた。感染の注意喚起なのか、単なる営業なのか……。

次ページほとんどのイベントは中止になったが…
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