チョコの本場で脚光浴びるサラリーマンの人生 「ショコラティエ」兼「部長」のリアル

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少女の横顔でおなじみの会社ロゴ(撮影:今井康一)

――これだけのチョコレートを作れる人なら、自分のお店を出さないの?と素人目には思ってしまいます。けれども、大石さんは研究開発部の部長さんですよね。普段はどういった仕事をしているのですか?

会議が多いですね。書類の確認も多いです。普通のサラリーマンですよ。フランスのショコラティエに会うと、どこで修業したか聞かれるんです。「修行はしていない、大学を出て会社に就職してチョコレート作りを始めた」というとすごく驚かれます。向こうはどこかで修行をして、そこから独立というのが普通なので。

――ショコラティエになろうと思って、入社したんですか?

まったく考えていませんでした。最初は、生産部でひたすらガナッシュというチョコレートを作っていました。2000年に“サロン・デュ・ショコラ パリ”に行くメンバーに入れられて、当時は1番年下で、先輩に比べたらチョコレートのことは、まったくわからない状態でした。

――修業じゃないですけど、その先輩方にいろいろ教わったのでしょうか?

温度や化学反応などの理論は、ずいぶん教わりました。チョコレートは結構、理論的なところがあるんです。ただ、味の合わせ方はあまり教わらなかったように思います。

新しいアイデアを出せる人を育てたい

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――今は、後進を育てる立場でもありますが、どう教育していますか?

これを合わせたほうがいいのではとアドバイスすることはあります。けれども、人によって味覚は違います。ですので、自分の意見を押し付けることはしません。自分のコピーを作れば作業性はよくなるかもしれませんが、それは絶対にしたくないんです。新しいアイデアを出せる人を育てたいと思っています。

――今後作ってみたいチョコレートはありますか?

人によって何がおいしいかは違いますが、それでも誰もがおいしいと言ってくれるチョコレートを作りたいです。それが何かは、まだ見えていません。それでも、すべての人がおいしいって言ってくれるものは、どうやったら作れるのかを考えながら“サロン・デュ・ショコラ パリ”の品評会にも臨んでいます。みんながおいしいと思うものは絶対にあるはずなんです。それを目指したいです。

大石さんは、旅先で出会ったお酒や食材についてメモは一切とっていない。書いておけばよかったと思うこともあるが、それでは旅行がつまらなくなってしまうという。
チョコレートについて聞けば一流シェフのような話が聞けるのに、夢だけに向かって一直線ということではなく、生活や余暇を楽しむ、ごく普通の会社員でもあるのだなと親しみを感じた。日本酒とチョコレートくらいに、会社と大石さんは相性がいい、ある意味マリアージュともいえる関係なのかもしれない。
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