チョコの本場で脚光浴びるサラリーマンの人生 「ショコラティエ」兼「部長」のリアル

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大石さん(撮影:今井康一)

――甘い日本酒には、どんなチョコレートが合うのでしょう?

講義では、貴醸酒(きじょうしゅ)という極甘口の日本酒と抹茶のガナッシュ(生チョコレート)を合わせました。貴醸酒を煮詰めてシロップにしてかけます。チョコレートは抹茶をたくさん入れて苦くしてあります。それを甘いお酒が中和して、うま味を引き出します。

――こういった講義に対するフランス人の反応はいかがですか?

すごく面白がってくれます。日本酒は、人気はあるのですが、飲んだことがないという方も多いんです。日本での販売価格に比べて2倍~3倍ほど高いですし、取り扱う場所もまだ少ないです。

――日本酒は1万以上も銘柄があると言われ、最高の組み合わせを見つけるのはものすごく大変なことのように思います。どうやって見つけるのでしょう?

酒蔵や酒屋に行って、このお酒は何に合うだろうと飲みながら考えます。講義のときは、チョコレートは自社のものという制約がありますので、そこから選びます。ほかにも、いろいろな方向がありますね。チョコレートを作るのであれば、最初から合いそうなものを考えます。あそこの酒蔵のは結構甘口で、米のうま味がしっかり出ているから……とかですね。

――酒蔵には、よく行かれるのですか?

旅行でよく行きます。温泉地には大概お酒がありますから、温泉を楽しみつつ、野菜や果物も一緒に買ってきます。関東近県を中心に、2週間に1回くらいですね。東京の外れに住んでいるので、山梨の酒蔵やワイナリー、長野や群馬が近いんです。ウイスキーの醸造所も行きますね。本当に楽しいんですよ。

ーー日本酒だけではなく、ワインやウイスキーも大好きなんですね。家にはどれくらいお酒がありますか?

冷蔵庫は2つあって、ひとつはお酒とおつまみ専門です。棚や手が届く範囲にも瓶がいっぱいありますね。リキュールやほかのお酒も合わせると、100本くらいあるのかもしれません。旅行に行くたび、ワインや日本酒を合計5本くらい買っていると思います。でも、日本酒1本をほぼ1回で開けてしまうので、あっという間になくなります。

――そういった努力の積み重ねが、フランスからの評価にもつながっているんですね。

努力していたわけじゃありません。趣味ですから。以前はこういった話はしていませんでした。皆さんが引き出してくれたおかげで、最近は話のネタになっています。講義を頼まれる前から、チョコレートと日本酒を一緒に楽しむことは趣味でやっていましたが、浸透するとは思っていませんでした。

世界的なショコラティエを育てる企業風土とは

チョコレートの市場規模はおよそ5000億。鈍化が見られるもののこの10年拡大傾向にある。バレンタインでは販売数は減ったが、単価が高い商品が売れている印象があるという。同社の“MINAMO”(期間限定販売で2020年3月時点では販売終了)は4粒で1600円(税抜き)もする。一方で、「宝石のようだ」と評されるほど美しい商品でもある。

見た目もカラフルで美しい「MINAMO」(写真:筆者撮影)

――MINAMOはお酒を使ったチョコレートなので、これを食べてみると、確かに同じお酒と合わせたら、さぞかしうまかろう……って思いますね。

MINAMOは「柚子と日本酒」、「イチジクと日本酒」、「梅酒」、「赤ワイン」の4種類で、すべて東京のお酒を使っています。「柚子と日本酒」は、東京の福生の「嘉泉 特別純米 東京和醸」を使っています。ガツンと来るのではなく、柔らかくお酒と水が香るように、チョコレートと日本酒、そして果物の味が三位一体になるようにしています。

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