知らぬ間に進んでいたJR東海「テキサス新幹線」 バイデン氏は高速鉄道支持派、政局も影響か

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新線の建設に際しては、周辺の環境に与える影響を見極め、その対策を講じることも必要だ。これは環境影響評価(環境アセスメント)と呼ばれ、日本でもJR東日本が計画中の羽田アクセス線が現在、環境影響評価の真っ最中だ。

テキサス高速鉄道の環境影響評価手続きは2014年にスタートした。その後、報告書案の作成、報告書案への意見募集(パブリックコメント)を経て、現在は最終環境影響報告書の公表を待つ段階。これが公表されると、改めて意見募集が行われ、必要な修正を行ったうえで環境影響評価手続きが終了する。

安全基準と環境影響評価は、高速鉄道計画を実現するため必ずクリアしなくてはならないハードルだった。ようやく、どちらもゴールが見えてきた。

大統領選や新型コロナの影響は?

残るハードルは資金調達だ。現在想定されている総事業費は200億ドル(2兆1400億円)で、当初計画の120億ドル(1兆2840億円)から大幅に増えた。州政府などの補助も見込むが、主として民間から資金を募る計画だ。日本の国際協力銀行(JBIC)と海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)が出資する特別目的事業体(SPV)が最大3億ドル(321億円)の資金を貸し付けることが2018年に決まっているが、全体から見れば微々たるものだ。

一足先にカリフォルニア州でも高速鉄道計画が2015年に着工となったが、資金集めが難航。結局、コストがかかりすぎるとして建設計画は大幅な見直しを余儀なくされた。

新型コロナウィルスの影響が長引けばアメリカにおける投資マインドが冷え込み、資金調達に影響が出ないとも限らない。一方で、民主党の次期大統領候補に名乗りを上げたジョー・バイデン前副大統領は、人の移動が安全で効率的になり、環境に優しいとして鉄道の拡張を支持しており、「高速鉄道に投資する」という政策を掲げている。カリフォルニア高速鉄道計画の完遂やワシントンDC―ニューヨーク間の鉄道高速化が例として挙げられている。ただし、テキサス高速鉄道への言及はない。

テキサス州は伝統的に共和党が強い州である。テキサス高速鉄道の進展には安倍晋三首相によるトランプ大統領への働きかけが奏功しているとしたら、仮にバイデン氏が大統領になった場合、テキサス州の高速鉄道計画はどちらに転ぶか。

ウイルスから政局までさまざまな要因がテキサス高速鉄道に影響を及している。TCとしては、沿線へのPRを含め、目先でできることを粛々と行っていくしかないだろう。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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