【足達英一郎氏・講演】世界経済危機下のCSR(前編)

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●世界は、「市場」から「政府」にギアを変えた

 このような経済状況下で、どんな経済システムがいいのかという考え方に、今、大きなパラダイムシフトが起こっているような気がする。
 では、これまでのパラダイムとはどんなものだったのか。1979年にマーガレット・サッチャーがイギリスの首相になり、1981年にアメリカにレーガン政権が誕生する。この70年代終わりから80年代に世界を支配したのが新自由主義とかレッセフェールと言われるもので、経済学で言えば新古典派経済学であった。この新古典派経済学の要素は3つあり、1つが、「市場に信認を置く」というマーケットメカニズムだ。逆に言えば、市場を歪めることはすべて悪だという考え方だとも言える。2つ目は、自由貿易を軸とする「グローバル化の推進」だ。3番目は、「小さい政府」で、政府が経済にできるだけ介入しないで、政府の役割は国防や警察など限定的なほうがいいというものだ。
 この「市場」と「グローバル化」と「小さな政府」というパラダイムが支配的だったのが80年代だろう。

 そして90年代は、この勢いが一気に大きくなっていった時代だった。もちろん、そのような中で企業の暴走、市場の暴走もあったが、人々には一種の割り切りがあった。市場の暴走や企業の不祥事を何とか防ぎたいが、その時代の雰囲気では、市場自体を否定してかかるわけにはいかなかった。もっと言えば、社会主義や共産主義が目指した計画経済には、もはや戻れないという雰囲気があった。そうした中で考え出されたのが、CSR(企業の社会的責任)だったのではないだろうか。
中編に続く、全3回)

[当講演は2009年5月14日に開催されました]
足達英一郎(あだち・えいいちろう)
株式会社日本総合研究所 ESGリサーチセンター長。
1986年一橋大学経済学部卒業。環境問題対策を中心とした企業社会責任の視点からの産業調査、企業評価を担当。金融機関に対し社会的責任投資のための企業情報を提供。
主な共著書に『図解 企業のための環境問題』(1999年、東洋経済新報社)、『SRI 社会的責任投資入門』(2003年、日本経済新聞社)、『CSR経営とSRI』(2004年、金融財政事情研究会)、『地球温暖化で伸びるビジネス』(2007年、東洋経済新報社)等。
社団法人経済同友会「市場の進化と21世紀の企業」研究会ワーキング・グループメンバー(2002年度)。ISO/SR規格化作業部会日本エクスパート(~2008年度)。
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