コロナ不況でも「最低賃金引き上げ」は必要だ

ドイツとイギリスから得られる教訓とは何か

例えば、これまでの「最低賃金引き上げ」の流れを止めるようなことがあってはなりません。全国一律最低賃金に向けて、引き続き東京と地方の最低賃金の格差を縮小させることも必要です。イギリスはリーマンショックの後、「100年ぶりの大不況」と言われていたにもかかわらず、継続的に最低賃金を引き上げてきたのです。

日本企業は「規模」が小さすぎる

日本国内で行われている最低賃金に関する議論を聞いていると、まだまだ十分な理解がされていないことを痛感します。私の説明が足りていなかったのが一因かもしれませんが、海外において数多く発表されている論文の内容が、まったく伝わっていないように感じます。

これまでの読者の反応を振り返って考えてみたところ、まだまだ理解されていない点が明確になってきました。説明のための資料も見つかりましたので、今回の記事ではまだご理解いただけていないポイントに焦点を絞って、説明をしていきたいと思います。

今回の記事では、ドイツとイギリスで実施された全国一律の最低賃金導入の事例を検証していきます。その前に共通認識として、論点を整理しておきましょう。

日本はGDP総額が大きく、世界第3位、先進国では世界第2位の経済大国です。この順位だけを見ると、豊かな国のように映ります。しかし、GDP総額が大きいのは人口が多いからで、決して豊かなわけではありません。実際、日本の生産性と所得は非常に低水準で、1人当たりのGDP(=生産性)は世界第28位。大手先進国では最下位です。

生産性が低いと賃金水準も低くなります。購買力調整済みの数値で比べると、日本人の給料は極めて低水準であることが明らかになります。世界一の格差大国であるアメリカは例外ですが、生産性が低くなればなるほど貧困率が高くなるのも世界共通の傾向です。実際、日本の貧困率は先進国中第2位の高さです。

これから日本では生産年齢人口が急減する一方で、高齢者は減りません。このまま何もせずに放っておくと、近い将来、日本は間違いなく先進国の中で1番の貧困大国になります。

人口が減少する中で貧困率を上昇させないようにするには、一人ひとりの賃金を高めるしか方法はありません。そして、賃金を上昇させるためには、生産性を向上させる必要があるのです。

生産性は、経済学の「規模の経済」の鉄則に沿って、企業の規模に比例します。平均的には大企業ほど生産性が高く、規模が小さくなるほど生産性は低くなるのです。これは日本にかぎらず、世界中で認められている「揺るぎない事実」です。

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