前田建設、「道路子会社」の特別配当に反対へ 「前田の乱」次の焦点は4月の臨時株主総会に

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TOBが終わり、前田建設側は「(前田道路の)経営の独自性は尊重する。総合インフラサービスを一緒に目指す協議をこれからも続けていく。状況も変わったので、受け入れてほしい。従業員、組合に対する説明の機会も設けたい」とした。

一方、前田道路側の代理人は「粛々と開示を行うだけ。とくにコメントはない」とした。

次の焦点は4月の臨時株主総会

次の焦点は4月14日に開催される臨時株主総会だ。ここでは前田道路の経営陣が提案した1株650円の特別配当が議案として上程される。株主の過半数の賛成を得れば特別配当は実施される。

臨時株主総会の基準日は3月6日のため、同日時点の株主が議決権を行使できる。だが、前田建設が前田道路の51%株主となるのは3月19日の決済後であり、臨時株主総会時点で前田建設の議決権は24%程度にとどまる見通しだ。

前田建設側は「反対意見を出すか、委任状争奪戦をやるかなど現時点では未定」としている。ただし、直前の交渉で特別配当への賛同はできないとしていることから、「反対の意向を示すことになるだろう」(同)。

臨時株主総会では、短期の配当狙いの個人投資家は提案に賛成するとみられ、特別配当案の成否は機関投資家次第となる。機関投資家が、巨額の配当実施は道路の純資産を減らすことになるので企業価値を損なうとみるのか、それとも株主への特別配当実施は利益還元となるので好ましいとみるかにかかってくる。

特別配当実施は前田建設にとって頭の痛い問題だ。特別配当により前田道路の純資産が535億円減るため、前田道路の企業価値は目減りする。前田道路の株価は3月17日終値が2323円と、取得単価3950円の59%の水準に沈んでいる。市場は減損の可能性を織り込んでいるようだ。

だが、特別配当の有無にかかわらず、そもそもの問題として両社の信頼関係は崩れている。前田建設は「前田道路の経営の独自性・自主性を尊重する」としているが、信頼関係のない経営陣とシナジーを生み出すのは容易ではない。前田同士の対立の着地はまだまだ見通せない状況だ。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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