FRB緊急利下げでもコロナショックはまだ続く ついにFRBはこれで「お手上げ状態」になった

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私は現在東京に滞在中で、こうした状況からNYに戻るのを見合わせており、現地の友人などの情報によるところではあるが、大手のスーパーは買いだめに走る人でごった返し、一方で街はブロードウェーの公演などが軒並みキャンセルとなる中で人通りも少なく、閑散としているという。

また、普段は滅多に見ることのないニューヨーカーのマスク姿も、ここへきてかなり増えてきているようだ。米疾病対策センター(CDC)は、50人以上の人が集まるイベントを、今後8週間中止するのが望ましいと発表している。今やアメリカのほうが、日本よりも遥かに状況は深刻であり、パニックに陥っていると言っても過言ではないだろう。少なくともここまで人の行動が制限されてしまった以上、経済が今後さらに大きなダメージを受けるのは免れないのではないか。

FRBは金融政策のツールを使い果たし「お手上げ」の状態

そうした中、今回で金融政策のツールをほぼ全て使い果たしてしまったFRBは、この先どのように景気を下支えしていくのであろうか。

すでに政策金利はゼロにまで下がってしまった。FRBはマイナス金利やその効果に関しては否定的な見解を示しており、残された道は量的緩和策を拡大させる程度だろう。もし日銀のように購入対象を債券から株式ETF(上場投資信託)などの証券に拡大させる手も残っているが、これはやはり中銀にとっては禁じ手であり、パニックに陥った感のあるパウエル議長でも、さすがにそこまで踏み込むとは思えない。

また、債券の追加購入にしても、長期金利の低下余地がほとんど残っていない中では、金利を下げて景気を下支えするという側面よりも、政府の財政赤字が膨らむ一方となる中で、将来的な金利上昇の可能性を少しでも押さえるといった、消極的な目的の意味合いが強くなる恐れが高いのではないか。要するに、今回の緊急利上げによって、FRBはこれ以上何も出来ない、「お手上げ」の状態となってしまったということなのだ。

もちろん、これまで何度も指摘している、供給不足が深刻化する中でコスト・プッシュ型の「悪いインフレ」が加速するシナリオにも、引き続き十分な警戒が必要だ。

感染の拡大が一段落した中国では、徐々に経済活動が再開、いち早く今回の新型コロナウイルス感染の危機から脱しそうな感じはある。だが、1月後半から長期に渡って生産活動が大幅に落ち込んだという事実が消えるわけではない。サプライチェーンが分断されたことによる供給不足の影響は、むしろこれから出てくることになるだろう。

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