FRB緊急利下げでもコロナショックはまだ続く ついにFRBはこれで「お手上げ状態」になった

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もし、景気減速に伴う需要の落ち込み以上に供給が減少するなら、中長期的にインフレ圧力が高まり、FRBは逆に金融を引き締めざるを得なくなることも考えられる。これで「景気後退下でインフレが進む」というスタグフレーションに陥る可能性は、一段と高まったのではないか。

トランプ政権に経済対策はあまり期待できない

残るは、トランプ政権による財政出動を伴う経済対策だが、こちらのほうもあまり大きな期待が持てないというのが実際のところだ。

13日にはトランプ大統領が「非常事態宣言」を行い、新型コロナウイィルス対策費として最大500億ドルに上る連邦資金を活用することを明らかにした。もっともこれは先に野党の民主党が策定した経済対策法案をほぼ無条件に受け容れただけであり、内容はあくまでもウイルス検査の無償化や関した債の有給休暇、失業保険の拡充など、ウイルス関連対策が目的だ。

トランプ大統領は景気浮揚策として、給与税の減税を打ち出しており、これを実現させるためにも今回の民主党案を丸呑みしたものと思われるが、これについては結論が先送りされている。

もし大統領が主張しているように、今年4月から給与税を全額免除した場合、これまでの例のないほどの大型減税となり、財政のさらなる悪化は避けられない。また給与に掛かる税金を免除することから、現在給与のない失業者や低所得者には恩恵が少なく、消費喚起の効果がどの程度あるのか、疑問視されている。民主党は「大統領の選挙対策に過ぎない」と批判しており、容易には実現しないと見ておいたほうがよいだろう。

またトランプ政権内の人材不足も深刻だ。2008年のリーマンショックの際には、元ゴールドマンサックスCEOのヘンリー・ポールソン財務長官がウォール街をまとめ上げ、さまざまな対策を打ち出して危機を脱した。

だが、現在のスティーブン・ムニューシン財務長官にそこまでの働きを期待するのは酷というものだ。国家経済会議(NEC)委員長だったゲイリー・コーン氏や首席補佐官だったジョン・ケリー氏が在籍していた政権初期であれば、まだ期待が持てたかもしれないが、現在はそうした十分な実績を持つ幹部がほとんど退任してしまっているのが現状だ。

またこうした政権幹部の問題だけにとどまらず、トランプ大統領のハチャメチャな政権運営を嫌気した退職者が相次いだこともあり、連邦機関は慢性的な人材不足に陥っている。有効な経済対策を打ち出したいと思っても、それを行う能力も人手も足らないというのが実際のところだ。こうした問題は以前から指摘されており、これまでは景気が順調に回復していたこともあって、致命的なものとはならなかっただけの話である。今のような危機的な状況下では、悪い面が全て出てくる恐れは高いと見ておくべきだ。

松本 英毅 NY在住コモディティトレーダー

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まつもと えいき / Eiki Matsumoto

1963年生まれ。音楽家活動のあとアメリカでコモディティートレードの専門家として活動。2004年にコメンテーターとしての活動を開始。現在、「よそうかい.com」代表取締役としてプロ投資家を対象に情報発信中。NYを拠点にアメリカ市場を幅広くウォッチ、原油を中心としたコモディティー市場全般に対する造詣が深い。毎日NY市場が開く前に配信されるデイリーストラテジーレポートでは、推奨トレードのシミュレーションが好結果を残しており、2018年にはそれを基にした商品ファンドを立ち上げ、自らも運用に当たる。ツイッター (@yosoukai) のほか、YouTubeチャンネルでも毎日精力的に情報を配信している。

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