Slackはとくにエンジニアに好まれるサービスとして認知され、「Slackが採用されているかどうか」でその企業が働きやすいかどうかを評価する人もいる。日本でも、よいエンジニアに入社し長く居続けてもらうために、Slackの有料版を導入し、できるだけよいカルチャーをチャット上に構築しようと努めている企業があるほどだ。
Slackが好まれる理由は、メールや型式ばったミーティングから解放されるコミュニケーション効率性と、ビデオ会議やクラウドストレージ、カレンダーやタスクリストなど、普段使っているさまざまなサービスやアプリと連携し、Slackの画面から直接コントロールできること、そしてつながり続けることで居心地のよいカルチャーが生まれる点が挙げられる。
その広がり方もまたユニークだ。企業のシステム管理者でなくても、自社のメールアドレスでアカウントを作れば、Slack上に自社の領域ができる。同じ企業のメールアドレスでアカウントを作ると、ほかの人が作った領域に入ることができ、Slack上でつながる。そして社内に人数が増えてきたところで、Slackは企業に有料プランの提案をするのだ。草の根的にメンバーを増やし始め、最終的に公式採用を狙う流れは、Slackを気に入ったユーザーとSlackが共闘して、社内のシステム担当を口説く構図が出来上がる。
例えばIBMは、10人ほどのグループが1万もの拠点にわたって出来上がり、最終的に20万人の導入にこぎつけた。世界的な巨大企業の中で、使い始めた小さなグループを発見することは「とても興奮する」(バターフィールド氏)という。それが、Slack導入のきっかけになるからだ。こうして、サンフランシスコ、シリコンバレーの企業だけでなく、ニューヨーク、シカゴ、ロンドン、ベルリン、パリ、そして東京の企業へとSlack採用の輪が広がるようになった。
新型コロナウイルスの影響で、通勤電車やオフィスなどを避けるため、在宅勤務を基本とする企業が増えた。もともと東京オリンピックの際に、都心の交通容量確保のためリモートワーク推進が叫ばれてきたが、その5カ月前のタイミングで、リモートワークを実践で試す必要に駆られることになった。
Slackという「箱」にいかに業務を入れていくか?
しかし社内のコミュニケーション変革が数日で実現できるわけではなく、急遽Slackを導入したからすべてがうまくいくわけではないのは明白だ。そこでバターフィールド氏にSlack導入をうまく立ち上げる初期のコツを教えてもらった。
Slackについては、まずは「箱のようなもの」だと捉えてほしいという。
その中で、コミュニケーションだけでなく、どんな業務を実現できるかを考える。つまり、Slackが変革するのはコミュニケーションだけでなく、さまざまなツールやアプリに散らばっている日々の仕事を、Slackという箱の中に入れて解決していくイメージだ。Slackに入れれば入れるほど、社員の仕事はSlackの画面で完結する。バターフィールド氏がしているように、スマートフォンから片付く仕事もより多くなっていくのだ。
幸いなことに、Slackはさまざまなビジネスアプリケーションとの連携が可能だ。ライバルに見えるGoogleはカレンダーやドライブなどのサービスをSlackに連携させているし、MicrosoftもOffice 365がSlackと連携する。カスタマーサポートの仕組みを提供するZendeskや、ソフトウェアエンジニアリング必携ツールのGitHubも連携させることが可能だ。Slack連携によって、最新情報をSlack上に通知したり、スケジュールやタスクの確認などが可能になる。
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