貧困の救いかた スティーヴン・M・ボードイン著/伊藤茂訳
資本主義の対抗モデルとしての「社会主義」の消滅、米国発の世界的経済危機による新自由主義の退潮で、30年ほど前に全盛だった福祉国家モデルが見直されている。米国の医療保険改革を含めた各国でのセーフティネットの拡充も、その動きを後押ししそうだ。
貧困について言えば、その原因を個人の力では制御しえない経済や社会の働きに求め、それを社会全体の問題として克服していく方向だが、実は貧困の歴史は「個人の価値を物質的な所有と結び付ける」ところから始まると、本書は説く。
貧困の原因を個人のみに帰すべきか社会のみに帰すべきか、といった両極端に振れるのではなく、その克服に家族とコミュニティの役割が大きな意味を持つことを、グローバリゼーションの拡大のプロセスを経て、現代に至る世界各地の動向の中で本書は示す。
貧困は、所得という尺度が明らかにするより、はるかに文化的、社会的に複雑なものと教える。
青土社 2520円
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